帰還準備、その前に約束を
「あーもう疲れたじゃない。早くほかの子連れてきなさいよ。元の世界まで連れてってあげるわ」
気だるげにノアはそう言うとそそくさと箱舟へ入っていった。
「「「「…………」」」」
その一方で、残された4人はなんとも言えない空気でいた。もちろん、それを一番に破るのはネメシス、だが
「センセーも大変だったんだねぇ!全然難しいこと言ってたけど!」
「……ほんと、馬鹿なのか、なんなのか……まぁ、それがいいところか、お前の」
珍しく、悪戯っ子のような子供じみた表情をして、柊はネメシスの手を引いて校舎の中にいるであろう奴らを呼びにいく
「モリガン……ありがとうね。君のおかげもあるかな」
「……ふん、当然だ。弱い奴ならこの場で首でも切り落としてやったな」
「あはは、それは恐いね。物騒だ。それじゃあ、俺たちも行こっか。呼びに。それにこの世界のバルドルたちにも白いハンカチ振るから見てなよって言わなきゃ」
白いハンカチを振る、など人間の世界ではよくある光景だ。
テレビドラマや映画などで船にのって離れ離れになったりするシーンでお決まりの「さようなら〜」のあのシーン
それは決して悲しい別れではない、ということだとグルーガンは白い鳩を一羽、モリガンへ差し出しながら考えていた。
(もしも、バルドルよりも先に、君に出会っていたら、俺は確実に落ちていただろうね)
「……モリガンとは色々真逆だけど、いい友達になれそうかな」
「私は遠慮する。貴様のような変態は好まない」
「フフフ、じゃあなってくれるまでずっと言い続けておくね」
これが、とある世界のとある人間の抱えていた、闇のお話。
これでも序の口の深く辛いお話。
「……君になら、いつか、もしまたあえたら、全てを話してもいいかもしれない」
(長かった暗闇に刺した光、その光がもっと輝けるように、俺は今度は君のことも知りたいな)
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