事態を急速で回避する

「……平和の神様、何か言いたげね」


ノアが見くだした先、フォルセティであるグルーガンは、彼女を睨みつけながら、呟いた


「……ノア、俺の友人に酷いこと言わないでくれないかな。世界が違うだけでこんなに性格も違うなんてね。驚いたよ。俺は、君のことをもう忘れる。それがどれだけ大罪であろうと、君を忘れて、バルドルやモリガンを守る」

「なっ……」

「戦争の女神とは言え、女性だからね。言ったでしょ。俺はレディーファーストなんだ」


今までとは打って変わってどこか、スッキリとした表情で、グルーガンは微笑んだ
その肩には平和の象徴である白い鳩が羽を休めるためか、とまっている
鳩を撫でながら、グルーガンは、あのピアノ線を取り出した


「これは、俺が犯した罪への戒めとして持ってたけど……もう、返すよ」

「……。いらないわよ。もう。グルーガンは自分の中でスッキリ消化したみたいなのに、どうしてアンタがそんな表情してるのよ、雷神様」


そういえば、ノアがいるところにはいつも俺と柊がいたな。とグルーガンは思い出す。
グルーガンがノアを殺めた時ですら、彼は後ろから見ていた。


(もしかしたら……)


ある疑問が浮かんではきたが、それは柊にしかわからない話。
でも、もしそれが本当であったなら、この状況もあのときもそのときも、全部、柊にとっては苦痛の時間だったろうと思いながら。


「センセー、大丈夫?」

「あ、あぁ……」


表情からして大丈夫、といったものではないが、なんとか取り繕ったように柊は笑顔を見せる。
なるべく、グルーガンもノアも見ないようにしながら


「……そんなんじゃ、今度は柊が、×××になるんじゃない?」


ノアのその言葉は真っ直ぐ柊へ突き刺さったのか、動きを止め、無表情になった柊はゆっくりと口を開いた


「俺は……俺は、もう、遅いだろ。"あの時点"で、もう手遅れだったんだよ」

「え、ま、待って、全然、話わかんない!」


混乱をしたのか、ネメシスがそう言ったとき、彼女がこういった


「私が柊のこと、教えてあげるわよ」


(それは酷く悲しい雷神の心の傷)



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