禁忌かもしれない
「……月人さん、こんにちは」
「あ、挨拶している場合か!!」
「え、だって、いたから……」
うさまろを追ってきた先、そこにはほかの神同様に目に光を宿していない月人が神の状態で突っ立っていた
しかし雰囲気は攻撃的で今にも札を飛ばされそうだ
「……あれ、爆発するんだっけ?」
「のんきに言ってる場合か!」
「うーん、うん」
特に慌てることもなく、あっさりと神化をし、樹乃を抱え札が放たれる瞬間に飛んだ
それは普段のマイペースさからは予想もつかない速さだった
「……!さっきまでのおっとりはどこにやったんだ!」
「……?だって逃げないと死んじゃうから……。俺はいいんだけど……」
小さく自分の命はいらないと呟いたときだった、パシンと乾いた音がした
樹乃が宋壬の頬に平手打ちをかました音だということに、宋壬自身が気がついたのは、音と小さな痛みが走って3秒後のことだった
「いいとか言うな!生きたくても生きられない者だって山のようにいるんだ!!」
「……。そう、だね。……ごめんね?」
ぽつりと謝罪の言葉を述べて、樹乃の枷へと触れる
「……、今なら、ちょっとだけ、生きてもいいかなぁ、って思うよ」
そして、宋壬はその枷へ人差し指を軽く押し付け、少しだけ口角をあげて笑った
決して嫌な意味ではなく、あの無表情が、笑った、そのことに樹乃は驚いていた
「本当は、しちゃいけないことなのかもしれない、けど……俺は、人間だったから、神様のルールなんか、知らないから、きっと一回くらい、赦されるから……それに、俺じゃ、きっと月人さんは止めれないし」
途端に、樹乃の枷についていた、命の期限を表す葉が一枚、消えた
「!?な、何したんだ!!」
「……うん、俺は、歳徳神、だから……歳月を操るんだ。……巻き戻しただけだよ」
平然と、そう答えて宋壬はまた、笑った
「……俺が、守るから、月人さんを止めて?……俺には、できないから」
「なんでだ!宋壬にだってきっと……!」
「……ううん、できないんだ。だから、手伝うから、がんばろ?」
そして少女は語りかける、それをただ見守る少年の目に映った無に気づかずに
(……あぁ、よかった、月人さん戻ったんだ。……目が、生きている人って綺麗だな)
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