悲劇の平和戦争

「「……」」


全員がなんらかの方法でコミュニケーションをとっているのもつかの間、一番コミュニケーションが上手くいきそうなグルーガンとモリガンは、予想とは反してお互いに口を開いていなかった

元々口数の多いわけではないモリガンと、何故か黙ったままのグルーガン


「……」

「……貴様、名くらい名乗れないのか」

「あ、あぁ。そうだね。気が回らなかったな。俺は北欧神話のフォルセティ。人間のときはグルーガン・ルレットって呼ばれてるかな。ところで、君は?」

「……ケルト神話のモリガンだ」

「あぁ、戦争の女神様だね。光栄だな、こんな美人な女神に偶然とはいえ、あえるとは」


フフフっと紳士らしく笑みをこぼすグルーガンの表情に憂いが混じっていることにモリガンは気づいていた


「……無理をして笑う必要があるのか」

「フフフ、なんでそう思うの?」

「同じだからだ。お前は、本当に平和の神か?」

「……残念だな。それは本当なんだ。……ただ、それは俺から血生臭さがするってことだよね。それは、正解かな」


グルーガンの肩に止まった一羽の白い鳩を撫でながら、笑うその瞳は後悔で溺れていた
それを感じ取ったのかはたまたは別の何かのせいか、平和を象徴とする白い鳩は急にそこから逃げるように飛び去っていった


「あ……来たかな」

「……」

「やぁ、バルドル。こっちの世界では始めまして。かな」


(現れた凶器のような存在に恐れることのない正反対の二人)



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