海岸戦争

「くっそ……いねぇし」


徐々に募りだす焦りと不安と苛立ちを冷慈はもろに顔にだしたまま、海岸をザッザッと音を立てながら一人歩いていた

一人といっても、その数メートル後ろには狐面の青年が楽しそうに見物をしながらついてきてはいるのだが



「……おい、なんだよ」

「べつにぃ?ただ、おチビちゃん2号機が恐いから離れてただけ〜」

「よしわかったあと10メートルは離れようか」

「んなんじゃチビが見つけらんないしぃ。帰れないじゃーん」

「黙れよ、おニイさん」


完全に苛立っているその顔から真意を読み取ることなどたやすいと、冷慈の心境を知ってしまった仮面の青年は、ひとつ、悪態をついた


「変わり者のおチビちゃんに、指図はされたくないかなぁ」

「あぁ?」


(綺麗なままのおニイさんと俺とじゃ天と地の差ってやつだな)


苛立った不良ならではの口調に態度をしているのに、その読めてしまった感情は自分を肯定しているのが不思議でしかたがなかった


「……僕が綺麗だったら、おチビちゃん2号機はなんになるわけ?」


リーチの差で冷慈に追いつき、手首を引っつかんで、さっき失敗したにも関わらず、また、青年は低く色づいた声で聞いた


「……それ、やめろよ。腹立つんだよ。なんだって、いいだろ?おニイさんには教えてやんねぇよ」


仕返しと言わんばかりに、叔父によく似た妖艶な声で、冷慈は囁いた

二人の視線が絡まったのも1、2秒の間だけで、すぐに冷慈はつかまれていた腕を振りほどき、歩き出す


(さて、俺は尊探さないとな)


「……馬鹿だねぇ〜。チビなら、アレじゃないの?」


仮面の青年が顎で指した先は大海原。
そこでは荒れた海に佇んでいる探していた人物がいた


「尊!!なんであっこなんだよ!どうやって行けっつうわけ!?」

「そりゃー泳ぐとかでしょー?」

「はぁ!?俺カナヅチを超えたトンカチだぞ!?無理に決まってんだろ!……飛ぶしかねぇのか?」

「人間が飛べるわけないじゃん〜。それとも、やっぱり人間じゃないとか〜?」


その青年の声に答えるように冷慈は神化をし、青年を引っつかみ空へと舞い上がった


(へぇ、風神だったんだ)

(やべ、久々で加減しくった。上がりすぎたわコレ)


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