戦闘準備
「なぁ、お前さー」
「……」
「その仮面の下、綺麗な顔してんだろうな」
アポロンたちを探しにいく前、冷慈はふと、横に居る謎の仮面の青年に声をかけた
自分よりも背の高い男を目だけで見る
「さぁ?どうだろうね?」
低く囁かれたその声に、魅了されるわけでもなく、一瞬の驚きの表情のあと、すぐに顔をしかめた
「あーあ、これだからイケメンはよ。はいはい。イケメンな。黙ってろ」
「自分から聞いといて酷いなぁ」
「うっせーよ。ヘラヘラすんな。仮面ごとぶん殴るぞ」
「やってみればいーじゃん?おチビさん2号」
「……。いや、まぁチビだけどな」
尊のようにムキになって言い返しはしないその対応に若干の面白くなさも感じたが、新しい反応に新鮮さも覚えていた
「仮面してても、わかる人間にはわかるもんだろ?お前がどんな奴か、なんて」
「えー、じゃあ僕はどんな奴だと思うの?」
「弱い奴。自分に、弱い奴。"嘘"はつけばつくほど、自分の首を絞めるって知ってるか?狐のおニイさん」
下から、グッと至近距離まで顔を寄せ、冷慈は言った
知っていた。嘘の恐ろしさも、苦しさもあの息の詰まるような感じさえも
「まぁ、おニイさんにとってソレが自分を守るためにあんならいーんだろうけどなー。過剰防衛なら止めとけよ。……いいなぁ、まだ純粋だな」
「は?純粋?ナニ言ってんの〜?頭、大丈夫?」
「……。大丈夫じゃねぇから、そういうこと言ってんだろ」
若干、冷慈と面の青年の間に流れる空気が、険悪になりかけているとき、ゴツッという音がして、冷慈が頭を抑えてうずくまっていた
「いってぇ……!」
「あっはっは、ダッサ……いっ!?」
見かねた柊が冷慈に拳を振り下ろしたせいで、うずくまるのを笑おうとすれば、何故か自分までもが頭上に衝撃をうけた
「保健のセンセー!一発かましちゃった☆」
「おう、ネメシス。流石だな」
「でしょー!こらこらー君たちーダメだよー!喧嘩しちゃ」
((これもコミュニケーションのつもりだったんだけど……!!))
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