先輩だ

「……言われて来てみたものの、だーれもいないんですけどー!どうなってんのー!!……って誰か出て来られても困るけど……」


ブツブツと独り言を言いながら、言われた通りにギリシャのゼウスさんが作ったらしい箱庭へしぶしぶきたけど学校だし。
いや転校とか言ってたような気もしなくもないでーす。
話曖昧にしか聞いてませーん、仕方ないよね、私だから


「あ、あの……」

「ひぃっ!!!」

「え、あ、ごめんなさい」

「だ、大丈夫です!!」


背後から突然声をかけられて思わず飛び上がる。
心臓に悪いよ、そこの、真面目そうな女の人。
人間だ〜と思いながら、まぁ話しにくくはなさそうだな。とため息をついて、とりあえず話題を待っておく。


「……あの、あなたも、神様ですか?」

「……あー……えっと……」


(これはどう答えるのが正解なんですか)


完全に返答に困ってごまかす様に笑うと、あたりに花が沸いてでるように開花してしまいました。
やらかしました。爆発します。


「……普段は人間のフリしてます満田莉子です……。日本神話です佐保姫です、春の女神ですごめんなさい」

「ご、ごめんなさい……」


自己紹介らしくない自己紹介をして、次の話題を待つ。


「……あの、やっと、見つかってよかったです」

「へ?」

「じつは他の神様方もいらっしゃるんですけど……えっと、その教室に……」

「は、はい」


流れに身を任せて、とりあえず言われたとおり教室に向かうことにした。
こういうときは流れに身を任せるのが一番。こういうときだけじゃなくて、日常も。
兄ちゃんとか姉ちゃんみたいに変にアイデンティティ主張しすぎるとこの世の中、うまくいかない。


「それでですね」

「あ、はい!!」

(やばい今までの話聞いてなかった。まぁいっか)


「あのもしかして、冷慈さんの妹さんですか?」

「あ、そうです……」

「実は、さっき冷慈さんにもお願いしんですけど断られてしまって……」

「あー……兄は仕方ない、と思います」


話を聞いていなかったので、どういう流れでこういう話になったのかはわからないけれどどうやら兄ちゃんも来ているらしい。
まじかめんどくさいよ。


「兄は普通に人間ですから……え?待って、なんで兄ちゃん来てるの……」

「あ、いえ、だから……どうやら冷慈さんが風神の候補としてあがったみたいでして……」

「……そうなんですか。(日本神話終わったな)」


確かに、雷神、つまり柊さんの相棒である風神のおっさんが死んだことは事実だ。
神話上あんな死に際は認められないから、急遽、代理がいると判断したに違いない。


「あ、えっと、あの……」

「あ、すみません。草薙結衣です」

「草薙さん……おいくつですか……?」

「今年18になります」

(ひぃっ!!年上!!)


どうやら年上だったらしい。私今年2年になるはずです。1年目はなんとか留年せずに進学しました女神様です。大してなんの役にもたたない類の。


「じゃあ……草薙先輩……」

「え、あ、あの」

「私、人間としては今年17です……」

「!そうなんですか?で、でも女神様だし」

「あーそれはもういいんですあんまり役にたたない神様ですから」


ニッと笑って言うと、キョトンとされてしまった。
解せぬ。


「あ、じゃあ……年も近いですし、よければ、あの、普通にその、タメで話してもらえますか?」

「そ、そんな!」

「あ、私はこのままですけど、草薙先輩はどうぞ」

「そ、それならお互いに……!!」

「え、いいんですか?」

「はい、大丈夫です」


そういうことならお言葉に甘えよう

(敬語とかまじ無理。頑張ったくね?私)

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