Prologue

甘い甘いお菓子のようなふわふわキラキラした女の子はとてもかわいいと思う。

おれとは180度、いや360度違う。そんなかわいい子のお手伝いが出来ている今の仕事がとても好きだ。


「……あ、あの……その、ここで、あってますか?」

「はい!いらっしゃいませ!きっと、合ってますよ!今日は何をお求めでしょう?」


とびっきりの笑顔で悩める女子高生を迎え入れる。
そうそう、その青春してる感じ。可愛い可愛い。


「その……苺モンブランひとつくださいっ!」

「かしこまりました!……頑張ってね!」

「は、はい!」


おれにそんなつもりはなかったけれど、ケーキ屋をしていると、何やらここのケーキには恋愛成就の効果があると噂が立って、今じゃ恋に身を焦がしている女子高生の集まる不思議なケーキ屋へと変わっていた。


「あ、あのあの……っ!」

「ん?どうかされましたか?」

「お、お姉さんはどうやって告白をしたんですか!?」

「え"!?」


急に聞かれた質問に返答に詰まった。
何故そうなったのかはわからないけど、困ったのだ。おれ、20になりますが、こんな恋叶えると噂の店なんかやってますが、残念なことに恋なんかしたことがない。
きっと一生しない気すらする。


「あ、えーっと……その質問にいたった理由は?」

「皆がきっと、あんなお店のお姉さんだから、たくさん恋してきていい彼氏がいるだろうってその……」

「あらー風の噂ってやつかね?ごめんね?おれじゃなかった。私、こんな店やってるのに、恋愛したことないんだよ」

「え!?」

「だから、自分の言葉で頑張って!はい、マカロンもサービスしとくね!」


ニコニコと注文されたケーキとマカロンを箱に詰めお代と引き換えに手渡す。
どうか、彼女の可愛い想いが届きますように。


(恋してるっていいねぇ。かわいー)


そんな思い、したこともないけれど。


「あ、そうだ。バター切らしちゃってたんだ」


一旦店にクローズの札をかけて、エプロンをはずして財布を片手に外へ飛び出していく。
今日も忙しいぞー。と意気込みながら川沿いを駆けてお目当てのスーパーまで。


「お嬢ちゃん!危ないよ!!」

「へ?」


すぐ真横から、おじいちゃんの声がしてパッと視野を上げれば目の前にトレーラーがクラクションを鳴らしながら突っこんできていた


(あ、死ぬのか。と特に深くも考えずに立ちくしていたら、真横から誰かに腕を強引にひかれた気がした)

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