人間の人間による神のための説明会
「それなら、私が皆さんに教えます。人数は不十分ですけど、全員集まることを信じてやりましょう」
何かを吹っ切ったかのように横で草薙がそう言った
確かに、草薙が元の世界に戻るためにはそうするしかないのが現状なのかもしれないが
正直、気乗りしない。
まず第一に例え10人程度であろうとも5人程度であろうとも、こういう団体行動は俺はできない類なんだ
そんなことを思いながら、ふと教室を見渡すと、机が俺や草薙のも合わせて11個あった
今、ここにいるのは俺達を合わせた5人
まだ会ってもないのがいるらしい。いやまじでなんなんだ
俺無理だし、10人と一緒にいるとか
そうこう思考をまわしているうちに、どうやら草薙が入学式の説明をするということで神様である優等生そうな3人がもう席に座っていた
「君も教えてくれるんだよね!」
「…はぁ?一人で充分だろ。草薙、どうせこれ終わったら体育館行くだろ?」
「はい、一応…」
「俺、さっきと同じ場所いるから悪いけど呼んでくんね。体育館では手伝ってやるから」
「え、でも…」
「じゃ、よろしく」
まるで置いていかれた子犬みてーに不安そうにしているのは表情で分かったけど、生憎俺はそこまで優しくはない
同じ人間で、女子ってことでこれでも多少は優しくしてるほうだと思う
教室を出て馬鹿みたいに綺麗な廊下をただひたすら歩く
ちょうど正面からもう一人、髪型で言えば俺に少し似ているような不良じみた奴が歩いて来ていた
「…あぁ、生徒、ってことはなんかの神様か」
「あ?」
小さくぼやいたつもりが相手にはしっかり聞こえていたようで眼をつけられてしまった
とはいっても、俺よりも、少しチビだ
俺も小さい方なんじゃねぇかとは思うけど
「……俺なんか睨んでる暇あんなら教室でも行けよ」
「うるせぇ。テメーに言われる筋はねぇ!つうか何者だ」
「…人間。満田冷慈。風神候補。これでいいか?」
「なっ…!」
俺のなめ腐ったような態度が癪に障ったのか、奴は金魚みたいに口をパクパクさせている
なんだコイツ、面倒だな
「それじゃ、俺は忙しいんで。またな、神様」
右手をヒラヒラと振って本来の目的地へと足を進める
これ以上神様なんかと関わるなんてご遠慮だ。俺はずっとこのままで、1年後には元の世界に人間のまま帰してもらうんだからな
…それが、どれだけ報われなくて、最低な居場所であったとしても。
それでもかまわない。俺は神様にだけはなりたくない。
神様なんてもん、どうせ、俺達人間の願いなんて聞いちゃいねぇ
自分たちのしたいように人間を動かしてんだろ
そんな、自己中心にしか見えねぇ奴らになるなんて、専らごめんだ
「さて、不良の定番、体育館裏にでも行きますかね」
俺は不良ではないけれど
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