共死依存

「怖いことなんて、あるわけねぇだろ?馬鹿かお前」

「冷慈さん!じゃあ、なんでいつも一人で抱えるんだよ」


嘲笑うようにそう言えば、尊がそんなことを言う。抱え込んでるわけじゃない
何度も何度も神様にも願ったさ。助けてくれこのままじゃ生きるのすら嫌いになりそうだって


「何言ってんだよ、面白くねぇ」


早く、終わらせればいい
この世の終わりのような表情を見せてくれ

俺じゃない"満田冷慈が死ぬことによって味わう絶望と後悔に飲み込まれたような表情を


「でも、まぁ……もう終わるんだから有難く思えよ?」

「え……」

「お前らのために、優しい"冷慈さん"が死んでくれるんだとよ」

「!?な、やめろ!!」


途端に吹かせた、ここ一番の強風に乗って、向かい側から割れたガラスの破片が俺へとめがけて飛んでくる


「冷慈さん!!!」

「!?」


何を思ったのか、バッと飛び出してきて俺を突き飛ばす尊
馬鹿だろ、こいつは。自分から死にに来たのか

つい、手が尊を引っ張っていた


「あっぶね……」


ガラスの破片は綺麗に焦げた木へと突き刺さり、光を反射していた
それにしても、なんでこいつのこと助けたんだか
わかるのはきっと、あのもう一人の俺のせいだということくらい

でも、今は完全に別人状態だというのに


「冷慈さん……やっぱり戻れんだよ。今のが証拠だろ?」

「訳わかんねーな」


完全に混乱した俺はただ自分の掌を見つめていた
戻る必要はないのに、なんだか本当に俺が消えてしまいたい
いたくない。この場所に。他人のいるところに

これ以上、騙されるのはもう、ごめんだ


だからと言って俺だけがあっさり消えてやっても癪に障る


「……」


少し悩んでから、さっきの衝撃で下に落ちていた尊の剣を拾い上げ、無言でそれを自分に向ける
スッと自分の心臓をめがけて一突きしたとき、朦朧とした意識の中で、もう大丈夫だからという声が聞えたような気がした

それと、自分ではない誰かの体温を感じる


(あぁ、これでもう終わりだな。俺の人生あっけねぇ)


そう、これで終わったんだ。今までの何もかもから逃げたかったのに、逃げれなかった
やっと、逃げることを許されたんだから、いいだろ?

歪みゆく意識の中、なんとか目を開ければ、目の前には俺と同じように倒れている尊が血に濡れていた

俺と同じだ
なんでお前まで倒れてるんだろうな


「……冷慈、さ……おれ……も、連れて、いって……」


死にかけているその言葉を聴いて、脳みそで理解した
あぁ、一緒に刺したのか、と

俺が自分を刺そうとしたときに俺に抱きつくようにして間に割って入ってきたのか
だから、大丈夫って声が聞えて、体温が感じれたのか


「馬鹿、やろ……あ、りが、とう」



(意識が完全になくなる寸前に、耳元でパリンっと何かが割れる音が聞えた気がした)

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