諦めた願い
「っ……!」
どうしてか、離せと振りほどくことができない。それほどに、信用をしていたんだろうか
もう一人のマトモな俺が食い止めている。そんな感じだった
不思議な感覚だった。心と頭が正反対の考えをもっていて、追いつかない。追いつくことが出来ない
自分でもどちらがただしいのかさえ理解できていない
(頼む……もう少し、もう少しだけ、俺に言葉をくれ。まだ、何も、言えてない)
「っ、違う!!何も言うことなんかねぇ!邪魔だ、邪魔だ。どいつもこいつも、消えろ、死ねばいい!!!!!!」
他者の言葉など耳に入ってもこなかった。心で何か綺麗事を言っているもう一人の自分が酷く醜くて嫌悪する
こんなに他者への愛をもった俺なんて、知らない。
まるで、目の前にもう一人の俺がいるかのように、暗示をかけるように、ただただ憎しみ、復讐心を募らせた言葉を述べている
「違う違う違う違う……!誰も助けてなんかくれやしなかった…何もかも。全員上っ面だけに決まってる!最後は、いつもと同じに……っ!」
(助けて、助けてくれ。誰でもいいから。俺は、誰かが俺のせいで苦しむところは見たくない)
この真逆の思考と意思をどう対処すればいいのかわからなくなって次第にそれは俺を混乱状態に陥れる
そんな中、視界に入ったクラスメイトの表情は、まるで、驚きと恐怖がまざったような表情そのもの
「は、はははは。ほら、な。こんな俺を見て、逃げてるんじゃねーか」
「冷慈さん!!絶対に、私は、裏切ったりしません。だから……!」
「うっせぇ!!口だけなら何回だって言える!」
焦り、苦しみ、悲しみ何もかもの負の感情が混ざって胸焼けがしてきそうだ
それに、嫌悪と恐怖
「冷慈さん……アンタは一体、何がそんなに恐いんだ?……俺に、教えてくれよ。言ってくんなきゃ、わかんねぇよ……!!」
尊が、ボロボロになってもなお、立ち上がって俺へと必死に伝えてくる
(俺は、お前等をこの手で消すくらいなら、最期はせめて尊に、殺めてほしい。自殺は愚かすぎる)
俺は、お前等が苦しむ顔が見たい。俺ではない、マトモな"満田冷慈"を殺せば、後悔に苦しむか?
(どちらにせよ、酷で愚かな考えでしかねぇんだろうけど)
早く、お前等の前で死んでやろう。後悔、するといい。何も出来なかった。と
(最期に俺には、言い残したことがあるってのに)
幸せだなぁ、"お前等"のためを思って"満田冷慈"が死ぬんだから
("アンタ"の好きには、させない)
"俺"の意思をもねじ伏せてやる
(俺が、わらうためにはー……)
→ 尊に頼む→
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