どうも、兄貴です
岸壁に押し寄せる白波が太陽の光を受けて煌いている
そこには大海原が広がり、どこまでも果てしない地平線と澄み渡った青空があった
まるで尊みてーに(言うと拗ねるから言わないけども)荒々しくて綺麗な風景を眺めながら、俺の前をいつもの2人が歩いている
「そろそろ歩きつかれたんじゃねぇか?少し休むか」
「ここからなら海を眺められていいかもしれませんね」
「おう。そうだな!な、冷慈さん」
「あぁ。俺に構わんで勝手にイチャつけばいいものを……」
イチャついてねーしと反論をしながら、背負っていた剣を下ろして3人で寄りそうように地面へと座る
草薙を真ん中にして俺は左、尊は右に座っている
パッと横に座る草薙を見ると、頬のところに朱色の線ができていた
「……おい、怪我してるぞ草薙」
俺の発言にギョっとしたように尊が草薙の顔を見る
そこまでギョっとする怪我でもねぇけども
「!?な、まじだ……血が出てるじゃねぇか」
「え?どこですか?痛いところは特にないんですが……」
「ほっぺんとこ、切れてるぞ。これはやべぇ。すぐ手当てだ」
「痛くありませんし、浅い傷なら問題ないです」
2人の会話を真横で聞いていて、いつかの合宿の出来事を思い出す
あんときは逆だったな。んで、月人の書いた小説とかで反応に困ったりこいつらが茹蛸になったり
あー、本当見てて飽きない2人だ
「そういう問題じゃねぇよ。女が顔に傷なんて……さっきの戦闘でかすったのかもな……わりと手ごわい怪物だったし」
そうやって心配している尊はいつもよりも若干面白い。ツンケンしてた頃とのギャップがまぁ……な。
「手当てしねぇと……って、あー……」
馬鹿め。消毒は切れてるぞ。さぁ男、尊くんどうする?
あれだ、"どうする?俺"でお馴染み某CMみてーだな。
俺ならば放置だ。うん。現に今こうして一人でニヤニヤとしながら眺めているわけで
「どうかしました?」
草薙の問いに遠慮がちに顔を近づけて傷口に唇を当てる
あぁ、違うわ。ビルクチだわ、お兄さん寂しいわーなんて思ってもないことを、ちいさーく口に出してみる
「俺の存在が消えてますー。空気ですよー」
「「!?」」
「いや……その……な!?消毒……!冷慈さん!なんだよ、その顔!」
「ごちそうさん。もうお兄さん嫉妬しちゃうわー。ってことで俺も消毒してやろ」
ツーっと傷口に舌先を這わせてやる
はっはっは、どうだ純情どもめ。と思いながら元の体勢に戻ると2人して顔をまた茹蛸のようにさせていた
「……相変わらず純粋だな、お前等」
「冷慈さんが、ふ、不純なんだろ!?」
「いやいや、俺、健全なオトコノコですよ?なぁー?尊ー?」
わざと尊に近寄っていけばものすごい勢いで逃げ出しやがったので、俺もそれを追いかける
「草薙!休憩終わった終わった!追いかけんぞ!」
「え、わっ!!」
草薙の腕を引っつかんで、逃げる尊のところまで風に乗ってひとっ飛びをして、先回りをする
「うお!ずりぃよ!」
「お前等、つーかまえたー。セクハラしてやらぁああ!」
そう言って2人をこしょぐってやる
笑い転げる尊と、声をだして笑っている草薙
「ほんっと、可愛いな、お前等」
「「!?」」
急な俺の発言に、驚く2人にトドメを刺すように、自分でも驚くような甘い声で囁いた
(ずーっと愛でていたくなる)
fin
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