校舎までの道

校舎までの道を歩きながら、草薙が口を開いた。それはなんというか、紛れもなく、俺を同じ人間として見ていて、助けてほしいという感情が見えていた


「実は…3人の神様と会ったんですが…どの方も、難しそうな方で…」

「…へぇ、そうなのか。まぁ、所詮、神様と人間っていう、人種の違う奴等がお互いを理解しあうなんて無理だろうけどな。人間だってお互いを理解できないってのによ」

「それは、そう、なんですかね…」


同じ人間同士が仲良くできないのに、神様と理解しあうなんて、そんなの無理な話に決まっている
もし、できるというなら、俺もまた誰かと心から泣いて笑って、人生を謳歌出来るんだろうか
そう考えては、そんなわけがないと捻くれた俺が真っ向から否定をする

そうだ、そんなわけがない。いつもそうだった
信じては粉々に崩されてきた
いつしか、それが当たり前になり、いつも一緒にいる奴らさえも自分から遠ざけた

これ以上、俺を作られたり、壊されたりしないように


親戚や、幼馴染には強い、強いと言われて、俺の知らない俺を作られていく
強いと言われるたびに、強くなろうとしてただひたすらに前だけを向いた

大丈夫と言いながら、修復も出来ないくらいに崩れた心なんかどうしても戻ってはこない


「…冷慈さん?大丈夫ですか?」

「…え?」

「なんだか、辛そうな顔をしていたので…」

「…大丈夫。それは草薙の気のせい」

「…そう、ですか」


草薙が俺みたいな奴と一緒にいることが現状、不思議でならない
別に嫌じゃない。でも、それでも、俺と一緒に歩いてるだけで草薙が悪く言われないなら、それでいい



それからは、お互い何をしゃべるわけでもなく、ただ歩いていた

目の前についた、Aというクラスには、たった3人の制服を着た男がいた


「おや、君たちは…君たちも生徒なのかい?驚いた、なんて愛らしいんだっ」


よくわからない、金髪のフレンドリーなのが興味津々に俺と草薙のほうへ駆け寄ってきた


「こんにちは、お二人とも。僕はギリシャのアポロンだ。以後、よろしく……」


ギリシャ神話よろしくなのか、手を胸の前に添えてお辞儀をするそいつ見て、俺は瞬時に仲良くなれないことを悟った
タイプがちがいすぎる


「は、初めまして…」


草薙は困惑をしているのかキョロキョロとしながらも挨拶を返す


「私は、人間の世界から来ました。草薙結衣と申します」

「…満田冷慈。…風神、候補。らしいけど人間だから」


ここ重要と言わんばかりに候補と人間だけを強調して話してやった


「そうだったんだ…!噂には聞いてたけど、まさか君のような女の子だったなんて!それに新しい風神もいるんだね!」


いや、だから違う候補っつってんだろーが。と喉元まで出てきた言葉を飲み込んだ
正直に言えば、説明すんのも面倒になったからだが


「わたしにも自己紹介させてくれないかな。自分たちと違う人種にはとても興味がある」


次はミルクティーみてぇな色した髪の毛の綺麗な顔つきの奴だった


「わたしの名前はバルドル。光を司る北欧の神だ」


さっきのアホっぽいのとは違って、今度は俺の知り合いに似たような立ち振る舞いの紳士みてーな奴だった


「どうぞよろしく」


そういって、草薙と俺に握手を求めてくる
草薙はサラッと握手をしたが俺は、その手を叩き落とした


「よろしく。俺、握手は苦手だから」


本当はそうやって誰とでもニコニコしてそうな奴が苦手なだけだが、あえてここは黙っておく


「ツキツキもおいで!ほら、おいで!自己紹介して友達になろう!さぁ、早く!さぁ!」


「……了解です」


薄い紫の頭をした大人しそうなそいつはスタスタとこっちに無表情のまま歩いてきた


「……ツクヨミです」

「君たちは僕らが教室に来てから初めての、ほんとに初めての来客だよ!とても退屈な時間を過ごしていたんだ。おかげで僕らは親しくなったけどさ」

「皆さん以外には、来てないんですね……」


草薙が考えるようにそう呟いた
つまりは、アレだ。俺や草薙の世界で言うところの、サボリ、なんだろう


「皆はまだ納得できてないんだよ。学園に来てほんの3時間ばかりだし、そうたったの3時間さ」

「時間が経てば来てもらえるでしょうか……皆さんを卒業させないと帰れないんです」

「きっと解決できるよ、きっと!だから今は義務を果たしていこう」

「入学式を行えとの指示を受けていましたね。しかし知識のない俺たちには何も出来ません」


そう言って、ツクヨミと名乗った奴が俺と草薙を見た


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