固い決意

「お、れ……いい、よ。ふうじん……で」


搾り出すようにしてそう呟けば、尊が驚いたように目を見開いていた
一方で草薙は、俺が死なずに済んだからか、安著した表情をしてまた泣いていた
こんなに、俺のことで泣いてくれて、心配をして集まってくれているだけでこの上なく幸せだと思った

きっと、こういう関係が欲しかったんだ


「……そうか。ならばこれを食べるといい」


トトがそっと、俺の目の前に金色に輝く林檎を置いて出て行く
普通のものとは違う、その色の林檎に神秘を覚えた。やっぱり神の世界って面白いんだな
……きっと、神の世界も楽じゃない。そんなことは尊や他の奴等を見てれば分かる
でも、皆がいるなら俺はどんなことでも耐えれる

こいつらのいない世界に帰るくらいなら、一緒に行けばいい


「……お、きれな、いん、だけど」


起き上がろうとするも、未だ回復しない体調のせいで、その行動すら困難だった
さて、これはまずいな。どうやって食べようか、と焦りもせずに考える
まぁ、良策なんて思いつきもしないんだけど


「……だめ、かもな。くえ、ないし」


ヘラヘラと笑ってそういえば、目の前におかれたはずのリンゴが消えた
シャリっと噛んだ音がした方を見れば尊がかじっていた

あ、あ、これはそういうフラグなんだな?


「っ」


思ったとおり驚く間もなく口移しで食わされる林檎を抵抗もなく飲み込んだ
仕方ない。仕方ないんだ、多分。尊はそんなこと意識してもねぇだろうしな!!

もう俺おこですよ、尊くん


「……。大胆ですな。尊くんよ」

「んなこと言ってる場合か!?もう大丈夫か!?」

「おうおう。愛の口付けのおかげさまでな」

「なっ……!?」


周りのクラスメイトのニヤニヤとした視線を感じながら、ついでに俺までからかうようにニヤニヤとして尊を見る

当の本人は自分のした行動に今気付いたらしく茹蛸だ


「クックック……まぁ、これで俺も晴れて神様ってわけだよな」

「え、あ、そ、そうですね……」

「悪い、草薙がフリーズしてたのには気付かなかった。すまん」

「だ、大丈夫です!!驚いただけです!」

「え、あ、お、おう」


未だに茹蛸の状態で、まるで金魚にでもなったかのように口をパクパクさせている尊の頭をワシャワシャと撫で繰り回す


「!!」

「わーってるよ。ありがとうな」

「お、おう……」


(さて、もうすぐ卒業式だな)

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