お泊りの夜
「…………………」
俺の両隣から規則正しい寝息が聞えてくる
時刻はわかんねぇけど、夜中なのは確かだろう。ここは本当に夜空すら綺麗だ
ずっと見ていたいと思うのに、時は残酷でこうしている間すら進み続ける
決して止まってはくれない
「…………」
寝ている2人を見ていると、もっと一緒にいたい、このまま時が止まればいいと、無理な方へ無理な方へと思考が回っていく
それだけ、こいつらと一緒にいたい、ということなんだろうけど
「ごめん……」
一言だけ謝って2人の間から抜け出て窓を開けて箱庭の景色を眺める
最初来たときは外の景色を見ようともしなかったのに。
窓を開ければ気持ちいい風が吹いてくる。風に吹かれながら、また寝ている2人を見つめれば、危うく泣きそうになった
(今日は寝ないで、こうやって見つめてようか……。)
そう思って、2人を窓のところから見つめて2分。早くも睡魔に襲われてしまった
(チッ……寝る、わけには……)
ずるずると壁に座り込んで、気づいたときには瞼は落ちていた
あぁ、睡眠欲には勝てなかったか
途中、ぼんやりとした意識の中で唇に何かが触れたような気がしたが、何だかは分からなかった
「…………やべ……何時だ……」
少しだけ眩しく感じて目を開ける
なんだか、右肩が異常に重いんだが……耳のすぐ近くで寝息も聞こえ……
「!?」
慌てて、外と右側を交互に3回くらい見てしまった
外はうっすらとは明るいが、多分日の出の直前という感じの明るさで、横には尊が俺にもたれかかるようにして寝ていた
……俺が睡魔に襲われるときまではしっかりベッドに寝てたっていうのに
おかげで今はベッドに寝てるのは草薙だけだ
「……いつの間にこいつはここに移動してきたんだか」
くしゃっと撫でれば、寝てる尊が少し嬉しそうに口角を緩ませた
なんて簡単な奴。
「……に、しても珍しいな……日の出と一緒に起きるんじゃなかったっけ、こいつ」
日は徐々に昇りだしてはいるが尊は目を覚まさない。それどころか穏やかな表情のまま俺の肩を枕に寝ているのだ
(……まぁ、いいか。こんぐらい、な。起こすのも可哀想だし)
妙に俺の心臓には悪いがまぁ、仕方ないだろう。別に耳元で寝息がしているからといって、下半身にくるわけでもない、はずである
いや、まぁ、ここに来てからそれどころじゃなかったのはそうですけども
(………………くすぐってぇ……)
「……ん……」
「あ、悪い、草薙……起こしたか?」
俺が少し体勢を変えようと身をよじれば、多少の物音がしたせいか草薙が起きてしまった
「いえ……大丈夫です」
「なら、いーんだけどさ……ちょ、おい、く、草薙……!」
なるべく尊を起こさない程度の音量で俺は声をあげる
草薙が、俺の左肩によりかかるようにしてきたからだ
俺、また挟まれてるし。って問題はそこじゃねぇ!
「……ダメ、でしたか?」
「い、いやダメとかじゃねぇけど……」
やっぱり、緊張ってもんはするもんで。おまけに今までこんな経験もしたことがなかったわけで。
尊のことも好きなのには変わりなくても、やっぱり相手が女子か男子かでこう、色々と葛藤ってもんもある
「少し、少しだけ……」
(…………しゃーねぇから、朝んなったら起こしてやるか……)
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