揺らぎ続ける心
「…………」
次、目を開けたときには、クラスメイトが全員俺の寮の部屋にいた
不思議だ、苦しいのに、嬉しい
「冷慈さん!大丈夫か?」
尊が泣き腫らしたであろう真っ赤に充血させた目で俺を見てくる
こんなになるまで心配かけて、俺は何をしてるんだか。と少しだけ自己嫌悪になってしまう
「冷慈さん!良かった……」
草薙も尊と一緒で真っ赤な目で、泣いていたことがすぐに分かる
思わず、フッと笑ってしまう
あーあ、可愛い顔が台無しじゃねぇか
「な、くなよ……おまえ、らは。ほんと、ほっと、けねぇな」
途切れ途切れになりながらも、口を動かす
まったく、本当に放っておけない奴等に好かれたもんだ
まぁ、俺も好きなんだけども
「……貴様、何をしている。早く決めるようにゼウスにも言われたはずだが」
いつの間にか俺の横にトトが立っていて、俺を睨んでいる
尊や草薙、他の奴等もトトの言葉に首をかしげている
「……説明もしていないのか」
「……わらって、て、ほしい、だろ?」
「ふん……ならば、先に言うべきだったのでないか」
「……いい、んだ、これで」
最近よくするようにヘラっと笑えば、トトは呆れたような表情で語りだした
俺のことを
「奇人は……満田冷慈が元は人間で、風神候補なことぐらいはお前達も知っているだろう」
全員が黙ったまま頷いていた
……なんか、ちょっと面白いかもしれない。いや笑ったらいけねぇのはわかってんだけど
「奴は、今、人間でもあり神でもあるという状態なのだ。体は人間能力は神。……その能力に体がついていってない」
「……」
尊と草薙が息を飲む音が聞えた
心の中で黙っててごめんな、と謝りながら深呼吸をする。
酸素が体に回っていくのが分かった。こんな感覚なんだ、息をするって
「……体が持っている間に、このまま神になるか、もしくは人間に戻るか、どちらかを選択しなければ、このままでは消滅する。満田冷慈という存在自体が。……何故お前はその体になってまで、選ぼうとせぬのだ」
「しょ、消滅って……嘘だろ!?なんで黙ってたんだよ!なんで選ばないんだよ!」
「……っ」
尊が泣きそうになりながら俺に訴えてくる横で、草薙はもう泣いていた
これが、最期になるかもしれないと思うと自然と口が開く
「……好き、だから、だな」
「え……」
「たける……も、草薙……も、すきで、どっち、の想いにも、こたえられない……おれには、えらべ、ねぇんだよ」
草薙が泣きながら崩れ落ちる。ごめん、泣かせちまったな。って少しだけ後悔をした
尊も、ボロボロと泣いている
「頼む……っ、おれたちのことなんて、気にしなくて、いいからっ、どっちか、選んでくれよ……!もう会えないとかんなの、んなのそんな酷い話が、あってたまるかよ……」
生きるために、選べと尊は言う。
……確かに生きていればきっとどこでまた会うことになるかもしれない
もし、もし生きるなら俺はー……
→ 草薙と一緒に帰る→
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