楽しさの不安
翌朝起きたときには部屋にもう朝飯がおいてあった
昨日は疲れたのか早々と寝たんだった
その朝飯は一体誰が作ってったんだか。と思いながらテーブルまで行けば、一枚の置手紙があるのを見つけた
【弟よ、試練乗り越えたって?おでめとう!お姉さん特製朝飯食ってから、学園おいでなー。俺は一足先にいく】
……姉ちゃんだな。なんともお節介な人である
まぁ、そうは言っても、今日から部活が出来るわけで朝練をしようと思って早めに起きたんだけど
あの人どんだけ早起きしたんだよ。多分一足先に行くとか書いてるけど今頃はディオニュソスんところでまた寝てるんだろうな
「……しょうがねぇ姉ちゃんだなー。さて、と妹でも起こしとくか」
隣の部屋の妹のドアをガンガンと足で蹴たぐってやる
「おーい、起きろーブスー」
「起きてる!ブスじゃないし!馬鹿!」
「言うなぁお前」
はっはっはと笑いながら、朝飯を口へかきこんで、着替えて先に出て行くことにした
「おー、やってんな」
そこには俺より先に来ていた草薙と尊の姿があった。今日は草薙は走ってなくて、声援を送っている
「俺も交ぜろー尊ー草薙ー」
「冷慈さん!おはようございます!」
「おう!もちろんだろ!」
朝から尊と並んでグラウンドを走る。思い返せば本当にここでは色んなことがあったな
体育祭とか体育祭とか体育祭とか
中でも一番の思い出といえば、戸塚兄弟のパン食い競争だろ、あれに勝るもんなんかねぇぞ多分
「ふっ……」
「冷慈さん、余裕だな!」
「いや、余裕はあんましねぇよ。ただちょっと、思い出し笑いしただけで」
ただグラウンドを走っているだけでこんなに楽しいと思ったことがあるだろうか
いや、ねぇんだけど。
「尊さんも冷慈さんもその調子です!いいスピードですよ!」
尊と話しながらも走っていると、草薙の声援が聞えてくる
「元気ありあまってんな、おまえ!」
それに笑顔で返事をする尊。あぁ、やっぱりこいつらって見てて安心するな
朝から俺の心境は晴れ晴れとしていた
まだ残る、最大の難題のことなど考えてもいなかった
[ 59/82 ][*prev] [next#]