始まっていた試練

翌日、朝から学園長室に呼び出されたのは俺と草薙と尊のいつもの3人だけだった
どうせあの試練のことだろう


「……で、試練って何すりゃいいんだよ」

「何を言っている。試練はもうすでに始まっているのだ」

「……」


きっと、ロクなことではないだろう、生半可でクリアできるような試練なんか試練ともいえないんだから
どうせ、諦めたくなるぐらいに、答えが見えないような難題なんだろう
大丈夫だ。昨日の段階で決心は固めてきている
そう簡単に、もう揺らいだりしない


「今日の下刻時間までに、お前の望まぬ状況で、耐え抜き、真の強さとはなにかを見つけ出すのだ。それがお前にかせた試練だ」

「……耐え抜き、真の強さを見つける……」

「まぁ、お前が暴れだせばその時点で不合格ということになるがな」

「っ……あぁ、わかった。やってやる」

「内容は、お前が望んだとおりだ。草薙、尊がお前と行動をともにしていることによって、周りの生徒から非難される。それを、守り抜け」

「なっ!?」


ゼウスの口から聞いた言葉は俺には理解しがたい言葉だった
誰もそんなこと望んだ記憶がない。むしろ、拒絶したくらいだ
一体、どうしてこうも、厄介な試練をくれるんだ。そんな状態で俺が暴走しない自信が、ない


「どうした、冷慈よ。そんなに動揺していては下校時刻までに真の強さなど、見つけることは出来ぬぞ」

「……チッ、わーってる。やってやるから、黙って見物でもしてろよ」


それだけ言って、学園長室を出て、ただひたすらに歩いていく。後ろから草薙と尊も追いかけるようにして出てきた


「冷慈さん!待ってください!」

「ちょ、冷慈さん!!」


学園長室を出て、すぐだった。パシャっという音がして、後ろを振り向けば、草薙に水がかかっていた


「なっ……!」

「あー、ごめんねー、手が滑っちゃったー」


他クラスの女子生徒がわざとらしくそんなことを言っている。なんだよ、早々とえげつないことしてんじゃねぇよ。いやまじで


「……おい、そこの女子」

「何よ……きゃっ!」


草薙に水をかけたそいつを呼んで俺のほうを向いたと同時に詰め寄ってやった
所謂、壁ドンである


「てめぇ何してんだ?これ以上酷いこと、されたくなかったら、大人しくしてろよ?」


ドスの利いた低い声で耳元で言ってやれば、ガタガタと震えながら頷いた
よし、これで一匹駆除完了だな


「冷慈さん……」

「ん?」

「あ、いえ……ありがとうございます……」


その後も、草薙、尊が言われたり、何かをされるたびに、仕返しといわんばかりに脅してその場をやりすごしていた


(誰かを守れる強さくらい、持っている)


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