思いと願い

「そんな……!冷慈さん、聞いてください!確かに冷慈さんのいたところはそうだったのかも知れません!でも、ここは、箱庭は違ったはずです!」


草薙が必死に訴えてくる。わかってる。ここは違うことくらい、でも、本当に違うとは言い切れない。
断言をすることなんて出来やしない。


「尊さんも、私も、皆も冷慈さんが優しいことも、いい人だということも知っています!それは冷慈さんも同じなはずです!一緒に生活をして、勉強をして、部活をして、ここでの冷慈さんはなんだかんだ、楽しそうでした。だから、お願いです!信じてください!私達を!冷慈さんの知っている人たちとは違います!」

「うるせぇ!違くなんてない!一緒だ!結局は、いつも俺から離れていくんだからな!!もう散々だ!」

「そんなことないです!確かにそれがどれほど辛くて悲しくて苦しいことか私には全て理解は出来ません!でも、お願いです、自分で自分の居場所を壊そうとしないでください!」


自分で、自分の居場所を壊す……?そんなことない。最初から俺に居場所なんかない
無いものは壊せない。そう思ってしまう俺を自分でも止めることは出来ない
これじゃあ、あの悪夢のようになってしまうと頭でわかっていても、俺自身がそれを拒んでいる様だった

俺の心と比例するかのように風は強く吹き荒ぶばかりだ


「きゃぁっ!」


あまりの強風に草薙が揺らぐ。それを見ても、また、手も伸ばそうとはしなかった



「草薙!!」


強風に負けて落ちていきそうになったのを間一髪で、尊が食い止めた。今度はちゃんと手が届いたらしい


「冷慈さん!落ち着いてくれ!俺は、俺は冷慈さんとは状況は違う、けど!同じことを思ってた。どうせ理解されないなら、こんな世界って……!でも、今は違うだろ?」


尊のまっすぐな目に、何も言えず、ただ聞いている


「俺は、俺と草薙だけはずっと一緒にいる!裏切ったり、離れたりしない。どんなことがあっても、俺達は冷慈さんを信じたい!だから……!」




(揺らいだ心はどっちへ向けるべきか)



→ 二人を信じようとする

→ 感情に任せる

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