again the 謹慎処分

それから部屋に戻って、また一人で考える
さっきまでとは違って今は少し頭が冷えたのか考える余裕はできた


戻りたく、ない、わけではないんだろう。やっと見つけたと思った俺の居場所。
いや正確には、いたいと思えた場所
それを俺は自分で壊してしまったのか。確かに見ておきながら助けもしなかった
普通大事だと思っているなら動くはずなのに、ただ無心で見ていただけだった


「……俺、どうしたんだろうな」


自分でもさっぱり自分の心理が分からない。まるでもう一人別の自分がいるような感覚だった


「おー!不良の弟!また謹慎だって?」

「……姉ちゃん」


バタンっとデカイ音をたてて、開いたドアのところには俺の姉ちゃんの麗菜が立っていた
いつもと同じでそのあっけらかんとした、何も悩みのなさそうなその顔に多少苛立ちを覚える


「なんだよ」

「不機嫌だなー。お姉さん悲しい」

「うっせ。ほっとけ」

「……あのな、弟がこんなんなってるの見て、ほっとくほど俺も馬鹿な姉ちゃんじゃないのよ。……無理には聞かないけど、さっさと考えなおして謹慎処分解いてもらえよ。結衣ちゃんがすっごい落ち込んでるの見てると俺達まで辛いしな」


それだけ言うと姉ちゃんはさっさと俺の部屋から出て行く。
なんだよ、考えなおすって言われても、俺も自分の意志でそうなっていたわけではないから、どう考え直せばいいんだ、とお手上げ状態だから困ってんだよ

でも、姉ちゃんのおかげで少しだけ楽になったような気もする
それと同時に草薙への罪悪感も少なからず感じた


「自分でも、自分が止められない、か……俺、ほんとどうしたんだろうな……」


今回の謹慎処分はなんでか、前とは違って登校を許してもらえないだけで、外には出られるようになっているので、俺は気を紛らわすために外に足を向ける

考えたってどうせ答えは泥沼の中だ。こんなんじゃ考え直すこともできやしない


「……。外、歩くかな」


一歩寮から踏み出せば、外の風が俺を包むように吹いた
あぁ、これだから自然は好きだ
裏切らない、確かなもの。


「あ、冷慈……謹慎、解けた?」

「……宋壬」


丁度今戻ってきたのか宋壬と寮の前で鉢合わせになった。
それから俺は、宋壬に現状報告を兼ねて今までのことを話した。案外他人に話していると自分のことを客観視できるもんだろうと




「……そっか。自分じゃない、自分……それは大変だね」

「…………なんで俺はいつもこうなんだろうな」

「……冷慈が悪いんじゃないと思うよ。ただ、不器用なだけで」

「不器用、か……」


その言葉は俺に綺麗に突き刺さった。不器用、人との接し方が不器用ということだろう
それは否定は確かに出来ない。今までが悲惨だった分、どういう対応をするのが普通なのかは俺はよく知らない


「……わり、ありがとうな。ちょっと俺頭冷やしてくるわ」

「……うん。いってらっしゃい」


そう言って、あの合宿のときの山へと足を向ける
あそこはいい風が通り抜けていて、見つかりにくそうだし、うってつけだろう



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