結局寝れないだけ


何時間たっただろうか。未だ寝付けていない俺は天井を意味も無く見上げている。
今日はなんだかんだ来てよかった。すげぇ楽しかった

きっと、こいつらと元の世界でも友達だったなら俺はどんな荒波だろうとここまで荒まなかっただろう


「!?」


横からドスっというような音がして、息を飲むような声が耳に入った


「……っ。ぐぅ……ぐぅ……」

「尊さん……!?」


チラッと草薙のほうを見れば、尊が寝相が悪いのか、なんなのか草薙を抱きしめるような形になっていた

(これは……俺はやっぱり寝た振りのままのがいいだろうな)

勝手にそう解釈をして少し微笑んでから瞼を閉じる



「むにゃ……むにゃ…………んっ……逃げんな……もっとこっち……こい」


寝言らしき言葉が俺の耳にも届いた。なんだろう。青春だなぁ
俺の横にリア充がいます


「あったけぇな……おまえ」

「っ……!」

「ずっと……一緒に……いてくれ……おれが……守ってやっからよ……」


そんな声を聞きながら、どうしてか、俺が少し、苦しくなった
これがどういうもんなのかは知っている。俺だって経験くらいある。
あれだ、嫉妬、だ。でも、これは、俺の場合どっちに向いているのか、分からない
草薙への思い故なのか、尊なのか。
いや、普通に考えれば、俺は草薙を好き、なんだろう。

(でも……なんか、引っかかるな。いやいや、ちょっと待てよ俺。俺ってばいつの間にホモに昇格したんだ。ないない。それはないな。これも全部気のせいだ。)

そう思いながら、やっと来た、睡魔に意識を委ねる。











「……ごめ、ん……好き、だ……−−−」


とんでもない、その寝言は誰に聞かれるわけでもなく、ただ寝ている俺から呟かれていた






「んっ……?」


なんだか、眩しさに負けて、目を開けるともうすっかり朝になっていた
いつの間にか俺の上に掛け布団がかけられていて、月人は敷布団の上に寝ていた


(今、何時だ……つうかあいつらは……)


寝起きが最悪な俺は若干機嫌の悪いまま、起き上がり布団をたたんで、台所へと足を進める
そこにはもう起きていたのか、草薙と尊が一緒に飯を作っていた


「お、冷慈さん、おはよう」

「……おう」

「あ、よく眠れましたか?今度は私が床で……」

「寝れたから次もお前らが布団で寝ろ。床で構わんよ俺」


恐らく、嫌そうな顔で俺は喋っているのだろう、草薙が俺の顔色を伺いながら話しているのが手に取るようにわかる


「丁度、朝飯も出来たんだ。食っちまおうぜ」

「あぁ」


3人で朝食を取る。といっても俺はまだ半分は覚醒していないせいかボケーっとしているけど
そんな俺を他所に尊は月人の小説を書いているノートを手にとっていた


「今のうちに、あにぃがどんな小説書いてんのか見てやるぜ」

「勝手に見ちゃっていいんですか?」

「いいんだよ。おれらも協力しているようなもんなんだからさ」


そう言って、ノートを見る尊の後ろから、黙ったまま俺も覗き込んだ


「「…………」」

「どうしました?」


ペラペラとページをめくるたびに、尊の表情もくるくると変わる。
俺はといえば、この小説のおかげで覚醒してしまった。ただ真顔でそれを見ている

草薙と尊の恋を応援しているのに、本当は草薙が好きな俺。でも、尊のことを本当に弟のように思っているせいで、自分の気持ちをひた隠しにしている。そんな設定で書かれたその内容は俺にとってもなんだか複雑な気分になる

目の前で、好きな奴が弟みたいな奴とイチャついていて、それを応援することしか出来ない。……やばい、俺のキャパが超えそうである。

2人して必死に読んでいると気になったのか横から草薙が見ようと覗いてくる


「「ダメだ……おまえは見ないほうがいい。見ないほうがいいこともある」」


俺と尊が2人してそう言ったからか草薙は微妙な顔で追求をしてくる


「えっ……どういうことですか?」


悲しきかな。ダメといわれたら余計気になるのが人間だってこと、忘れてた


「あにぃのイメージもあるしな。これは見なかったことにしよう」

「そうだな。おかげで眠気が消えたわ……」

「あ、あの……はい」


未だに納得のいってないような顔で、渋々見ることを諦めた草薙に俺は少しホッとした

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