モデル?ワロタ

飯を食べながら思い出したように草薙が呟いた言葉で、そういえば!と俺はそそくさと席を立つ


「あ、尊さん。あとで手当てしましょう、指の」

「へいきだって。それより、食い終わったらまた練習すっからな」


俺が席をたったことには気づいてないのか、はたまたは俺が手当て用の救急箱を取りに行ったということをわかっていないのか、俺を気にせずに尊は怪我を放置しておくつもりらしい

させねぇぞ、この野郎


「ダメですよ、小さな傷でも甘く見ちゃ。見せてください」


草薙が尊の手をとったとき、こっ恥ずかしかったのか、プライドなのかはわかんねぇけど尊がすっと手を引いた


「ばっか、大丈夫だって。大袈裟なんだよ、おまえは」

「そんなことありません。尊さんだって、私や冷慈さん、月人さんが怪我したらどうしますか?」

「そんなのすぐに手当てするに……あっ……」


見たか、諸君。どうやら尊くんは墓穴を掘ってしまったようだ。聞いていて飽きないな。あいつらの会話はよ

救急箱を片手に戻りながら、俺もとどめと言わんばかりに尊に声をかける


「同じだな?そんぐらい、俺らだって心配してるってことなんだよ」

「大切な人はどんな小さなことでも気になるものです」

「草薙がごもっとも、だな」


口ごもる尊に俺はしれっと、手当てをしていく。と言っても消毒液をかけて絆創膏をはるだけ、といういたってシンプルな作業なのだが


「ふむ……そういう行動心理なのですね。参考になります」

「どうしたんですか?」


俺と草薙と尊を見ながら月人が何かを懸命にメモしている。本当に何をメモする必要があるんだろうか……と俺も思わず首をかしげてしまう


「気にしないで続けてください」

「そう言われても気になります……」

「あぁ……俺も気になるな……」

「そうですか。では説明した方がいいですね。3人を今書いている小説のモデルにしているのです」


月人の口から出たその言葉に思わず俺の動きが一旦停止をした。
なんでだ、どうして俺も混じってる。


「それって、どんな話なんだ?ヒーローが戦う話とか?」

「違います。恋愛青春ストーリーです」


尊の質問の答えにまた俺の動きが一旦停止を……どころか、盛大に飲んでいたお茶でむせ返った


「ッゲ、ホッ、ゲホッゲホッ、は、はぁ!?恋愛!?」

「れ、恋愛!?な、なんでまたそんなのを書こうと思ったんだ」

「そうですね。あまい月人さんらしくありませんね」

「アポロン・アガナ・ベレアの勧めでくじ引きで決めました。何を書いていいかわからなかったので。テーマは若い男女の初恋です」


そのテーマを聞いて3人で顔を見合わせる。俺も含めて、3人とも眼を丸くする
いやいや、恋愛って普通2人だろ?


「そのテーマに適していると思い、勝手ながら参考にしています」

「え、あ、あのさ、それってもしかして三角関係、だったりすんのか?」


もしや、と思い恐る恐る月人に確認をとってみる。


「三角関係……そうですね。恐らくそのことだと思われます」


えっと、つまり、それは……月人の目には、参考にしたくなる程度には、俺達がそういう風に見えている、ということか
尊と草薙も同じことを考えたのか、2人の顔があっという間に茹蛸のようになった

……おいおい、純粋だな、お前等


「にしてもまぁ……本当に参考になんのか?」

「なります」

「さいですか……」


急に黙りこくった明らかに意識したであろう2人を片目に俺は一人平然と飯を食っていた

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