食卓のような何か

あれから、尊はなんとか途中から一人で、カレーを作りあげ、今は月人もいれて4人で晩飯中だ


尊がソワソワとしながら俺達の反応を伺っている


「ど、どうだ、あにぃ、冷慈さん。まずくねぇか?」

「美味しいです。不味いか美味しいかでいえば、確実に美味しいの部類に入ります」

「……!うまい、これうまいな!尊、すげーよ、初めてでこれは俺よりすげーんじゃね!」

「ほんとか!?」


露骨に喜ぶ尊を見ているとなんだか本当に微笑ましくなってくる。
こう、うん。こんな弟が真面目に欲しかったな、っていう感じだ


「あにぃが食い物を褒めるなんて滅多にねぇからな!作った甲斐があったぜ!」


黙々とカレーを口に運んでいる月人を見て、ふと思った。
宋壬にこんなにも雰囲気が似てても、食に対する意識がはっきりと違うのか、と
宋壬は、確かに味の美味い不味いはあいつもそこまで気にはかけないがその分ごぼう並の細さでとんでもない量を食べる
美味いもんなら尚更だ。
でも、月人に関しては、どうも食自体に興味がなさげだ


「草薙、おまえも食ってみろよ。どうだ?」

「どんな風に仕上がるんだろうってドキドキしてたんですが、美味しくてびっくりしました」

「なら、じゃんじゃんおかわりしろよ!いっぱい作ったしな!」


初めて作った料理が好評だったからか、上機嫌な尊も俺から見れば可愛いと思う
いや、別にそういう意味じゃないけど、どっちかってーと弟みてーでって意味だけど多分


「尊、俺おかわり」

「戸塚尊、おかわりをください」

「あにぃも冷慈さんも、もう食ったのか。はえー!」


無邪気に喜ぶ尊、くつろいでいる月人、微笑ましそうに笑みを浮かべる草薙を見ているとなんだか、安心してくる
あの黒い感情のことなんか今の俺は完全に忘れていた





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