VS尊
「よーい、はじめっ!」
草薙の一声で試合は始まった
竹刀を見よう見まねで構えた俺に向って尊が突っこんでくる
重い一発を正面から受け止め、弾き返す
剣道はどうだか知らないが、空手では、手首のスナップがどれだけ効くかによって相手の攻撃をどう交わすかにも関わってくる重要項目だ
それを竹刀でも応用すれば少しの力で弾き返すことは可能だ
「っ……!」
「今度は、俺だな!」
間髪開けずに、相手の懐へと飛び込んでいく
ギリギリのところで受け止められたがまたすぐに竹刀を振り下ろす
肩の力は抜いて、腕も抜いて、腰の力だけで叩きつけている
それだけで、尊の防具にかするだけでも、音が違う
「くっ……!」
太刀には怯んではいないが、多分、力を入れすぎてる。
その分動きが若干だけ硬く見えた
時間めいいっぱいお互いに打ち合い、礼をして尊との試合は終わった
「久しぶりだと若干きついな」
「冷慈さん!で、今やった感じで俺の弱点はわかったか?」
尊がここぞとばかりに詰め寄って聞いてくる。
俺は、深呼吸をしながら、手で尊に待ってくれと訴え、脳内で言葉を選ぶ
「……、全体的に、力に任せすぎてる、そのせいでフットワークも思ってるよりも重い。くらいか?もうちょっと力抜いて、腰いれて打てば、大分変わるんじゃねーかな」
「それは……まぁ、確かにそうか。うん、気を付ける。でも冷慈さんあれで初めてだったんだろ?すっげーな!気迫っつうか、スキすらなくて狙えないっつうか……防具なしでも全部受け止めて弾いちまうんだもんな」
「あれは空手で使うんだよ、敵の拳を弾きたいときに」
おぉー!っと物珍しそうな目をして俺の話を聞いている尊
素直というか、純粋と言うか、とにかくそこらの言葉がぴったりである
それと、他にも弱点があるのか、思い返してみる。さっきの試合中の尊を見る限り、俺はやっぱり力加減くらいしか思いつかない
「草薙、月人、お前等からみて俺と尊はどうだった?」
当然、試合をしていない奴から見れば、多少の弱点くらいは見れるだろう、それに、人間ってのは、まぁ神様にも限らずだろうが、100人いれば100通りの考え方、見方があるともいうし
聞いておいて損はなさそうだ
俺があえて自分の弱点を聞こうとしているのも、今後の空手にも活かすためだったりする
「そうですね……尊さんのは改善できるわけではないですが、体格が不利かもしれません。」
「「体格?なんでだ?」んなの弱点のうちに入らねぇだろ」
草薙の意見に俺と尊の疑問が、最初の部分だけハモる
俺も別に体格さは弱点には入らないと思う、というよりも、気にしたことがない類だ
身長は、まぁ、チビと言われれば気にはするけど、基本的には気にしないようにしてるし
「そ、そうですか?」
「これがおれだ。身長も体重も含めてな。そんなこと気にする方が器が知れてる。小回りも利くし、的が小さいほうが竹刀が当たりにくいだろ」
「戸塚尊はプラス思考ですね」
「考えたってしょうがねぇことは考えるだけ無駄だ!」
尊のその言葉を聞いて、俺までもが納得してしまった
そう言われたら、確かにそうかもしれない。
いつも尊の言葉にはハッとさせられてばかりな気がする
「冷慈さんの方は、なんというか、受け止めるときに少しだけ下がる癖みたいなものが……」
「え、あ、あぁ……サンキューな。じゃ、月人は?」
「今の一試合だけの印象になりますが、君は持久力が不足しています。戸塚尊は目立つ弱点があるというわけではありませんが、荒々しく繊細さに欠けている印象です」
持久力の点については、もう俺は元々なので、黙ってうなずいておいた。
尊は月人からの指摘を重く受け止めたようで、真剣に考え込んでいる
「よし、次だ次。んなもん今から鍛えていけばいいだけの話だからな。草薙、今度はお前と俺だな」
「は、はい!」
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