退屈しのぎに脱走をはかる


俺が謹慎処分をくらって何日かがすぎたころだ、最初は部屋の掃除やらなんやらと地味にやることをみつけだしていたが、流石に暇をもてあましだして、俺はそそくさと窓を開ける


「……お、ここだけ、開いてる?」


一箇所、窓の外に何も結界のようなものが張られていない場所があった
でも、昨日は確か、ここもダメだったはず……
不思議に思いながらもあまりに退屈だったその部屋を飛び出したくて、窓枠に足をかけ飛び降りた


「よっと」


生憎靴は持ってきてないので、裸足であたりを練り歩く
やっぱり外の風は心地いい
部屋の中に篭っているより断然いい。空は綺麗に澄みきってるし自然はあるし
目の保養だ


「離せ、離せ!」


グラウンドに出たとき、聞き覚えのある声がした
そこにいたのは草薙と尊……と、泥人形
泥人形は尊にサンドバッグのように殴られている

(……俺もあんなだったのか)

いや、それよりも酷かったかもしれない
俺は、殴るどころじゃなかったから


「離せーーー!」

「げぇ……」

「た、尊さん……!もう、大丈夫です」


草薙が止めようと尊に声をかけているが、尊にはその声は届いていないのか未だその泥人形を殴りつけている
あれはいいサンドバッグだな


「もう離してますから……尊さん!」

「…………」


正直に言うと、迷った。このまま降りていこうか、見物していようか
でも、この間もそういえば草薙は俺に恐怖の眼差しを送りながらも止めてくれようとしていたことを思い出し、一歩足を進めたときだった


「……お、おれは。また……」

「せっかく作ったおもちゃが壊れてしまったではないか」


子供の格好をしたゼウスが出てきて足を止めた
そうだ、俺が出て行っても何もならない。むしろ悪化させる可能性だって無きしにもあらず、なんだ

元々、俺の謹慎処分もまだ解けてはいない。そんなところを見られるのもまずいだろう


「おもちゃって……?」


バレる前にこの場から立ち去ろうと思っていると草薙の疑問の声が聞こえて、結局俺の足は動かないままその3人を見つめる


「より人間を学べるよう人形に恋愛感情を実践的に持たせてみたのだが……どうやら失敗のようだ。少し与え方が過剰だったようだな。しかし……お主は相変わらず短気だのう。感情に任せて同じ過ちを繰り返すとは。まだまだだな。だから『乱暴者』というレッテルを張られるのだ」

「……………………」


黙りこくっている尊を目にしても俺の足は動かない
むしろ、なんとも思えない。状況がうまく理解できてないだけだが、俺が突っ込んでいい雰囲気ではない
でも、それでも、やっぱり気にはなってしまう


「さて、失敗作は回収して次の遊びをするか……」


ゼウスはサラっとマントを翻して元来た道を戻る
俺は慌てて身を隠した。バレて謹慎処分が悪化というのは避けたい


「……………………」

「尊さん、こちらへ」


草薙は落胆している尊を中庭へと誘導していく
どうにも出来ないと分かっていても気になってしまい、俺も距離をあけて後をつけていく

先に言う、決してストーカーではない。





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