昼休み大事件

「やーっと昼休みかよ……。まじお疲れ、俺」

「おい、馬鹿冷慈」

「んだよ、哀詞」


教室で、昼休みを告げるチャイムが鳴ると同時に俺は足を机へと投げ出した
そんな俺のところへロキのイタズラをことごとくスルーして、哀詞がやってくる
こういうときは基本俺にとっていいことはないんだけども、どうしましょう


「これで、俺の焼きそばパン買ってきてくれさい」

「……おい、それは俺に否定をさせないための言葉か」

「お前に拒否権があると思うか不憫矢郎」

「へいへい、冷慈いっきまーす」


気だるいまま、生徒手帳片手に廊下を歩く
途中なんだか騒がれてるような気がするが多分、俺の気のせいだと思っておこう

俺は箱庭ではまだ、何もしていないはずだ、多分
いや、してない。普通に学生生活してましたけどコノヤロー
なので、微妙に感じる視線は外していただきたい。最近妙にこれで落ち着かない。
そうだ、早朝練習に付き合いだしてぐらいからだ
鬱陶しい……

イライラしながら、売店で、頼まれた焼きそばパンと自分の弁当を買って、いや、正確にはもらって、また来た道を戻る

さっきまで何もなく平和だったはずの道で、小さいけど、女子の悲鳴が耳に入った


「……っ、きゃ……や、やめ……」


そこにはゼウスの作ったはずの泥人形共が、同じ泥人形の女子(なんか弱そうなの)を取り囲んでいる
正直に言おう、気に食わない。あと邪魔だ、ここ廊下


「おい、お前等、何してんだ」


取り囲んでいる奴の中の一人の腕を掴んで捻り上げる。当然相手は痛さに苦しんでいるようだが、俺には愉快にしか見えない

もっと、苦しめよ。所詮泥人形なんだ


「壊れたって、次があるもんな、お前等はよ」


人間とは違う、んだからさ。


「ほらァ、なんか言うことがあんじゃねぇのかァ?あ?」

「……ぐっ……い、いた……い……」

「痛いようにしてやってんだよ、感謝しろよ」


窓ガラスが、窓枠がこれでもかというほどガタガタと揺れている。
分かってる、俺のせいだということぐらい


「ほぅら、見てみろ。こーんな可愛い面した女一人によって集って、恥ずかしくねぇか?ん?」


力加減がいよいよ出来なかったのか、掴んでいる泥人形の腕がバキバキっと音を立ててありえない方向へと曲がる
周りも、助けたはずの女子ですら俺を恐怖の眼差しで見ていた

もう、どうでもよくなっていたことは確かだ。こんな場面に遭遇したが凶だったのか。
忘れていた、あの元の世界にいたときの荒みきった感情がまた俺の中にある怒りを彷彿とさせている


「なぁ?そうだろ?痛いだろ?だったら、もっと苦しんでもいいんだぜ?」


誰も、助けてなんかくれやしねぇさ
そう耳元で低く囁けばそいつは震え上がるように顔を青白くさせた
何をこれぐらいで。馬鹿な奴だ


「たすけっ……助けて…くれ!」

「だから、無駄だって、言ってんだろ?」


俺の予想も虚しく、恐らくこいつの友人の一人が無様にも俺を止めようと、割って入ってきた時だった

激しいガラスの割れる音がしたと同時にその破片が2人に綺麗に突き刺さり、俺のことは避けて、砕け散った

当の2人はといえば、今の衝撃で跡形もなく泥へと戻っていた


「はっ、ざまぁねぇな……」


何事か、と聞きつけた野次馬の中に、俺のクラスメイトがいた


「なんだよ、全員で」

「冷慈さん!な、何があったんですか!?」

「別に?2人、泥に戻してやっただけだろ。何が悪い。……あーいう奴は、死ぬべきだと思うだろ?」



驚きの表情で俺を見ている草薙がいる
なぁ、なんでそんなに距離があるんだ?



「……なぁ、草薙」

「冷慈さん……?」

「尊……」


お前もそんな表情で俺を見るのか、と思った時だった
後頭部に衝撃を受けて俺の目の前は真っ暗になった






「一足遅かったか」

「ゼウス様、トト様……柊先生とグルーガン先生……」

「ごめんね、驚かせちゃったかな」

「ったく甥が悪いことをしたな」


「さっき言ったばかりだろう、奴は二面性をもつ神だと。もう忘れたか」

「あ……」

「ギリギリで最悪の事態は避けれたようだが、彼奴には重い罰を与える」

「!!や、やめてください!きっとこれには事情がー……!」

「ならば草薙に免じて己の酷さに気づくまでの謹慎処分ということにしよう」




(俺は自分の残酷さをも理解していない)


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