これだから神様は


俺が次に目を開けたのは、明らかに身体に顔に、風を感じなくなった時だった


「…は?」


目の前にはいかにもお偉いさまがいそうななんとも言えない綺麗過ぎる部屋。


「ここは、どこ?」


俺ではない誰かの声がして振り向けば、何か剣を持った同い年くらいの女子が一人、立っていた


「おい…」

「!?」

「…ここ、どこ」


無駄だと分かっていても確認せずにはいられなかった


「す、すみません…私にも、何がなんだか…わからなくて…」

「…………」


そのとき、誰か人の気配だけは察知して、とっさに声を出した


「誰だ、いんなら出て来いよ」


気配のするほうに2人で振り向けば、そこには金髪の少年が一人、立っていた
明らかに、常識からはかけ離れた、それこそ現実離れしたような豪華すぎる服装に、身長に合わない、でかい杖みたいなのをもったガキ

その割りに、そのガキの顔は、なんでか俺の知り合いの32歳がよくする顔に似ている
全てを見透かしている、知っているといわんばかりの顔


「…あなたは、誰なんですか」


隣から、緊張じみた声が聞えた。女子が恐る恐る、事態を把握しようとしているらしい


「ワシの名はゼウス。ギリシャ神話の天を司る神だ」

「…なっ…」

「……!ゼ、ゼウス…?」


いくら俺でも、そのゼウスという名前は聞いたことはある
俺の場合は幼馴染の彩詞や叔父の柊さんからうるさく色々聞かされていたせいもあるだろうけど

だからって、ゼウスってこんなガキだとは誰も思いもしないだろう
これは、ガキの悪ふざけか、そう思ったときだった


「ほう……ワシを疑っているのか、人間よ」

「…!」

「………」


まるで見透かされているかのように、凝視される
疑いたくもなる。むしろ疑わない奴がどうかしてる。でも、冷静にそう考えるのとは裏腹に俺の鼓動は緊張からか早まるばかりだ


「私は、その……神様に会うのは初めてで……あなたが本物か判断できなくて…」

「確かに信じがたいことだろう。お前の意見はもっともだ。では、ひとつ面白いものを見せよう。そこの男も信用していないようなのでな。……ハッ!」


そういうと、そのゼウスと言ったガキから眩しいくらいの光が出て、気づけば当たりが白に見えた

やっと、眩しさもなくなったと思って目を開いて愕然とした
明らかに、厳しい雰囲気と半端ではない威圧感を身にまとった初老のおっさんがいたからだ
確かに、こっちの方が、ゼウスといわれて納得は行く


「…どうだ?これがワシの本来の姿だ。姿形を変えることなど容易いこと。先ほどはお前達が怖がらぬよう幼子を模していただけだ」


その発言を聞いて確信を覚える。
俺の大嫌いな存在なのだと。俺にとっての嫌悪の対象がまさに目の前にいるのだと


「ゼウス……様」


横でまた女子が小さく呟いた
事実を確認するかのように

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