騎馬戦どころじゃないので

俺が自席でくたばっていると最終競技が決まって、その準備をしだしていた
競技は騎馬戦らしい
よくあるやつだな。俺は好きじゃねぇけど

チラっと尊達不良トリオを見れば、ロキと尊、ハデスがチーム、として協力しているのが目に映る

(あぁ…俺の嫌いな感じな)

俺がここまでチームワークやら協力という言葉を拒むのにはそれ相当な理由はもちろんあるが、それは他人に話す気は更々ないんだ


(馬鹿みてーにしやがって……どうせ……)


さっきまでの一瞬の楽しさはどこへやら、俺はまた不機嫌へと落ちていく


「冷慈、大丈夫?」

「……顔色がまだ悪いな」

「……そうか?……悪い、俺、ちょっと抜けるわ。保健室で寝てるから」


心配をしてくれた(であろう)トールとディオニュソスに言付けをして、一人、保健室へと歩いていくことにした

(もう見なくてもいいだろうしな)



保健室について、早々にベッドへとダイブする
辛い、疲れた。

でも確実に俺の中には、あの爽快感というか、一瞬の楽しさが残っていた
柄にもなく本気で走ってたり、応援に答えたり、笑ったり、叫んだり

(あんな感覚、いつぶりだろうな)

くたびれきった身体を癒す様に、すぐに睡魔が襲ってきた


「……ん、おやすみ……柊さ、ん……」


寝る間際に俺の保護者代わりである叔父さんの名前を呼ぶ
当然、返事がくるわけもない


『あぁ、しっかり寝ろよ、クソガキ』


意識をなくす寸前に声が聞こえた気がした、これは都合のいい幻聴だ、と思いながらも目を閉じ、眠りについた









「……ったく、なーにが今日から箱庭、だよ。ゼウスのじじいめ……。俺の甥を巻き込んでやがったな」

「…お疲れ様ですね。柊さん」

「まじで本気出してたな。珍しいっつうか馬鹿だろ、コレ」

「……俺も、寝る」

「あぁ、お休み、宋壬」


そんな会話があったことなんか俺が知るよしもない。
それは元の世界にいたときの俺の唯一の家族達の声なのだが
いや、まぁ正確に言うと家族ではないんだが、これはこれで色々あるわけだ




「誰だよ!お前ら!!」

「そうカッカするな。俺は今日からここの養護教員…保健室の先生ってやつだ」

「俺はただの教師かな。まぁ、教えることはないだろうけどね」



あれから何時間くらいたったんだろうか、なんだか俺の周りが騒がしい気がして、目が覚めた
擦りながら、目を開ければ、そこには間違いなく、俺が元の世界にいるときからの知った顔が4つあった
それに加えて尊と草薙


「…だぁあああああああああ!?」

「なんだ、もう起きたか」

「いや、いやいや!?柊さん!?何してんだよ!アンタ、え!!」


完全に状況が把握できてない俺を見て鼻で笑うこの人の落ち着きようはなんなんだろうか
ちなみに、今目の前にいる4人は俺の元の世界での同居人で、一人は柊さん、俺の実の叔父。
もう一人、背の高いクリーム色の髪の毛をハーフアップにした外人はグルーガンさん、名前が可哀想なのはこの際無視だ

それから、同じ顔が二つ、並んでいる。これは俺と同級生の彩詞、哀詞。
所謂一卵性の双子で、見分けるなら目つきとかけている眼鏡の種類で見分けるのが妥当だ


「俺達も、気付いたらここにいてな。ついさっき、来たばっかりでまだ何も分かってない」

「……え、あ、そう」

「そうなんだよー。だってさ、冷慈、俺が天津甕星(あまつみかぼし)なんだってよ?」

「……彩詞が……哀詞は?」

「俺は天津麻羅(あまつまら)」

「どっちも知らねぇ…尊、お前ならわかるだろ」


日本神話のこいつなら知っていて間違いは無いだろうと思い、話を急に振ってみた
案の定驚いたような表情ではあったが、思い出すようにして話しだす


「天津甕星が星の神で、天津麻羅が鍛冶の神」

「そっか、サンキューな」

「ところで!冷慈さん!コレ誰だよ!!」

「あぁ、悪い、俺の家族みたいなもん」


尊は戸惑い、というよりも若干他人への拒否反応を見せているような気がするが、まぁ、ここで顔をたまたま合わせただけで、今後尊とこいつ等が話すことは無いだろうと思い適当に説明をしておく


「ちなみに、俺は元々、雷神だぞ」

「え!?柊さん、え!?」

「俺は、北欧神話のフォルセティかな」


柊さんとグルーガンさん(以後、グル兄)はどうやら既に神だったようだ
なんということでしょう……

戦慄している俺の真横のベッドから、また一人、聞き慣れた声がした


「……俺は、歳徳神…。日本神話……」

「宋壬!お前までもか!」

「……なんだか、わかんないけど」



(とりあえず、これで俺の味方が増えたって事に間違いはなさそうだ)


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