声援は力なり


それから、決着はどうしようかということで進行役の生徒達の間で議論があって、俺達3人の個人戦のあとに、もう一勝負しようということで話が決まった


「それでは、今から個人戦の種目のくじを引かせていただきます!……150Mリレーです!」

「……150!?はぁ!?」


思わず声を荒げてしまった俺を全校生徒が見る。
いや、なんだよこっち見るんじゃねーよ死ねコラ

それよりも何よりも、俺、短距離しか無理だぞ。せいぜい100Mが俺の持久力の限界だぞ!
舐めるなよ!俺の超短距離型持久力を!


「くっそ、まじか」

「あれ?もしかして苦手な感じ?それじゃ、俺にも勝ち目あるかなぁ〜」

「……ともかく、頑張れ」

「チッ…やる気失せる…」


そうして3人で指定のレーンにつく。


「では!準備はよろしいだろうか!」


俺はこうなりゃヤケだ、といわんばかりにクラウチングの姿勢をとる。スタートダッシュで差だけでもつけてやる
俺、スタートダッシュだけ速いタイプ。


「よーい!」


集中して耳だけに神経を持っていき、ピストルの音とほぼ同時に飛び出した


「うお!冷慈さん速ぇ!」

「カゼカゼ!凄いんだね!とても凄いよ!」


そのまま、そのまま、と自分で暗示ながら、走る。
ただし、走って50M、疲れた。

よって徐々に落ちてくるスピードを感じつつも、これ以上走ると後でキツイし、別に勝ったからといって俺は部室は要らないので、若干手は抜こう、と思っていた
毎年体育祭でしているように、本気は出さない、はずだった


「冷慈さん!頑張ってください!!」

「頑張れ!冷慈さん!」


草薙と尊の声援だけが俺の耳に届いた
いつもの体育祭と違うことは、コレか

そう思うと、自然と、足に力が入ることが分かった


「っらぁああああああああああ!!」


腹の底からの声をだし加速する。
正直に言えば叫んだからかたぶん初めて限界を超える勢いで走っているからか喉から血の味さえしてくる

俺が、自分で一番驚いている
こんなに真剣に競技をする羽目になるなんて

後ろから近づいてきてるのは多分、トール。足音的にそのすぐ後ろにディオニュソス

ゴールは目前で血の味のする口内も無視して、今までにしたことのないくらいのスピードでゴールテープを切ってやった


「…っしゃぁああああああああ!!どーだお前等!っはぁ、はぁっ、ひぃっ」


思わず高らかに叫んで喜んでしまったが、どうにも初めて限界に挑戦したせいか、さっきから続いている血の味に勝てそうにない
おまけに酸素も入って来ない


「はっ、はっ、はぁ…は…」


大げさにも見えるほどの荒い呼吸を繰り返しながら、徐々に落ち着かせていく


「凄いねぇー、2人とも速いんだからさー俺大変だったよ」

「……ディオニュソスも充分速かった」


2人はまだ会話ができるようだが俺には会話すらままならない


「冷慈さん!すっげーな!」

「はぁっ、はっ…」

「とても凄かったです!」

「はぁ…っ、うえっ」

「「え!!」」


次の瞬間、俺は胃液とやらをリバースしていた


(走るんじゃなかった)

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