ある日の放課後最悪事件
ある日の放課後だった
なんだかやっとここでの生活とか、尊に懐かれたこととかに慣れだした頃、事件が起きた
それはそれは俺の大嫌いな事件のひとつだ
「やぁやぁ!今、時間ある〜?」
「はい、大丈夫ですよ」
「なんだよ、キャンディ野郎」
「オレ、アンタたちに質問あるんだよねぇ」
これが全部の悪夢の始まりだった
「聞くところによると、部室ってのがあるらしいじゃん?それって、オレたちにはないワケ〜?」
「あ、そういえば」
そういえば、部室というもんも、確かに存在する。
まぁ、俺には関係ないしなかったんだけども
草薙はハッとしたように、考えだした
「準備した方がいいですよね。手配しましょうか」
「ヨロシク♪おねだり一番乗りのオレにいい場所頂戴ネ?」
「帰宅部なのにですか?」
「もらえるものはもらっておいたほうが良いでしょ?それに使うかもしれないし。たぶん」
たぶん、って言いやがったな、このキャンディ野郎……
絶対にロクなことに使わないだろ
せいぜい使って、サボリ部屋になるくらいなんじゃねぇんだろうか
「おい、こういうのは他の奴にもちゃんとした場所をやるべきなんだよ。じゃねぇと部活動しにくいだろうが」
「そうですね……。こういうことは公平に決めましょう。あとで揉めても大変だと思いますので」
「2人とも真面目ちゃんでツマンナイ。……部室はどう決めるわけ?」
不貞腐れたような表情のロキに呆れつつも、部室のことを頭の片隅に、俺はいつものように窓越しの空を眺める
草薙がチラッと俺の方を見ているのは知ってるが、俺がそんなことの案を出せるほど有能じゃないことくらい多分わかってるだろうから、あえて黙っておくことにした
「えぇと、ですね。くじ引き……というのは安易過ぎますし」
「……このバラバラ感で話し合いは絶対無理だぞ」
「ですよね……何か案ありませんか、冷慈さん」
「悪い、ない」
話し合いなんてものが出来るなら今までの草薙の苦労は要らなかっただろう
出来ないから草薙が途方にくれているわけで
まぁ、俺は空手部っつっても部員一人だし、尊もいつも来るわけでもねぇから部室は要らないわけだが
「じゃあぁ〜、勝負で決めたらァ?」
「……へ?勝負?」
(……めんどくせーこと言いやがって)
ロキの勝負発言に若干うんざりしながらも次の言葉を待つ
まぁ、それ以外に適任な案はないだろう、と俺も油断したのが悪かった
「そッ!体育祭で勝った方が先に部室を決める権利贈呈〜ってな感じ」
「……っ」
「体育祭?なぜ、そうなるんですか?」
体育祭、その言葉を聞いただけで身構えてしまった俺がいる
あんな競技大会なんか潰れてしまえばいいのに、と本気で呪っているくらいには俺は体育祭が嫌いだ。当然、体育祭だけではなく、文化祭も動揺に嫌いだ
何がチームワークだふざけやがって
現実の嫌な出来事を思い出し絶好に不機嫌丸出しであろう俺をよそにロキは楽しそうに喋っている
「だって体育祭って、学園の戦争なんでショ?白は骨、赤は肉を表していて、チームに分かれて骨肉の争いを繰り広げる。相手を骨にするか、肉を引き裂くか……血で血を洗う争いッ!って本で読んだけどォ?」
いったいこの解釈をした本はどの本だ
今すぐにもってこい、採点は120点にしてやるから
まぁ、現実はそれがまるで個人の心臓をえぐるかのような辛い行事には違いない
「……体育祭やるの?わたしも興味があったんだ」
どっから話を聞きつけたのかバルドルが会話に混ざってきた
割と目が輝いて見えるのは俺の気のせいだろうか
「青春の1ページを飾る、汗と涙の輝かしい思い出なんだってね。ああ、青春……なんて美しい言葉なんだろう。青い春という表現は本当に素敵だ」
「なんでだろうな。俺だけか草薙」
「なんでしょう?」
「青春、って聞くとさ、青春、それは〜♪って続けたくなるんだけど」
「それは言わないお約束です満田さん」
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