空手部員

アンケート用紙を回収した草薙が紙を広げては落ち込んでいる
どうせ粗方白紙なんだろう
でも、次の瞬間、ハッとしたような表情になり、その紙とハデスを見比べる

なんだ、ハデスもなんか書いたのか。と思っていると、次は草薙がガタっと音を立てながら席を立ち、俺を見た


(嫌な予感しかしねぇ)

「皆さん!皆さんにはもっとも指示の多かった天文部と空手部を体験してもらおうと思います!仮入部です、強制です」

(やっぱりか…しくじった)


俺の嫌な予感はドンピシャで草薙は明らかに喜んでしまっている
俺のせいです、すみません


「あれ、アンケートってそういう話だったの?」

「……そうです」

「……天文部、か」


どうやら天文部のほうはハデスの回答のようだ


「草薙。どうでもいいけど、まっさか空手部のほうは俺に一任する、なんて言わねぇだろうな……」

「もちろんです!冷慈さんに一任します。せっかくの経験者ですし、是が非でも」

「……書かなきゃよかったのか」


はぁ、っとため息をついてしゃーないか、俺もゼウスのおっさんに理解しろだの言われてるし、(思い出すと腹が立つけど)やるしかないのは事実だし、と諦めたときだった


「具体的には何すんのォ?」

「天文部の方は一番責任感がありそうなハデスさんに部長をお願いして活動を行います。空手部は経験者の冷慈さんにお願いします」

「俺が……?」

「……へいへい」


俺は若干面倒だな、とは思う。元々、そこまで他人と話もしないからか、そういった、他人に教える、という行為はもっと困難だ


「見た目的にしっかりな感じだからァ?ネンコウジョレツってやつ?もっとアクティブなリーダーがいいな〜。満田は恐そうだしィ」

「てめぇ、文句言うくらいなら自分でやれや、こらぁ!おれはハデスさんでいいぜ」

「おい、お前、俺のことはフォローしねぇのか」

「てめぇのことなんか知るかよ」

「なァ〜に長いモノに巻かれちゃってるワケ?それとも、デスから何かもらってんのォ?ワイロとかさァ?」

「少なくとも、てめぇよりはマシだ。とにかく天文部やりゃいいんだよ。興味はねぇけど……」


興味ねぇのにすんのかよ、逆に失礼だな。とか思いながら、一人俺がやっていた空手の型を思い出していた
いざ、するとなれば身体が覚えているから平気だが、他人に教える、羽目になると厄介だ


「聞きたいんだけどさぁ、冷慈のする、からてぶ、っていうのは何するわけ?」


ディオニュソスが俺にその質問を投げかけたおかげでロキと尊の動きは止まったが、全員が俺の方を見ていた


「何って……決まった時間内で相手を殴ったり蹴ったりすんだよ。ただ、使っていい技とかそれを身につけるための移動稽古ってのがあって、身体と精神を鍛えるのにもってこい、ってところだな」


なるべく分かりやすく、簡潔に伝えようと俺としては頑張った方だ
これで伝わったかは謎だが、やたらと、眩しい視線が俺に突き刺さることだけはわかった


「……んだよ、尊」

「なぁ!あんた、それ強いのか?」

「……そうだな、一応、黒帯っつって、ランクでいうところの一番上にはいる」

「へぇ……一番上、か。強いって事だよな?」

「多分な。じゃあもう俺は行くぞ」


もしかして興味を引いてしまったか、と思いながらもジャージを持って一人行動へと足を進めることにした

廊下を歩きながら一人黙々と型を思い出す
忘れてはないがあやうい箇所もある。これは実際身体を動かさないと、思い出せないだろう

黒帯まで行ってしまうと実際問題、ほぼ、身体にしみついているから、頭で考えて型をやったりはしない


(でも、教える羽目になったら、これはまずいな……。まぁまず、来ないか。尊は微妙だとしても)


黙々と歩いているといつの間にか体育館前に来ていた


「…頭で考えなくてもやっぱ身体って動くな」


そう呟きながら体育館の中でジャージに着替えて、まずは柔軟からしだす
とはいっても、俺は蹴りとかじゃないかぎりは身体は柔らかくはないので、痛いんだが。
これをしないことにはどこかしら傷めかねないので、しっかりとやっておく


「っ、てて…やっぱ俺、固いな…」




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