そういえば、君は?
「でも……名字って、なんなんだ?」
「あ、それはですね…」
草薙が、また名字について説明をする、それから新しい名前のことも含めてなので大変そうだなと思いながら俺は窓の外へと視線を移す
「戸塚尊ねぇ……あにぃと同じなら、仕方ねぇか。うん、おそろいって奴だな」
尊が、草薙のつけた名前を気に入ったらしく、受け入れている
おまけに、あにぃとおそろい、だとか言いながら
俺は、笑いたくなるこの衝動を必死にこらえつつ、まだ視線はしっかりと窓の外を向いている
いま、顔とか見たら終わりだ。俺、吹き出す自信しかない
さっきまで、苛立ちでどうしようもなかったのに、話してみたらコレか
俺もどうやら精神が壊れだしているようだ
「よう、アイドネウス!」
「意味もなく呼ぶな。ディオニソス・テュルソス……発音しにくいな。呼ばなくていいか?」
「何だよ、それ〜ひどいんじゃないの〜まぁ、オレも少し思ったけど」
「メギンギヨルズなんて、トール強そォ〜!ニックネームなんにする?アホロン風だとギンギンかギヨギヨだけど」
「……今のままでいい」
他の神様とやらもそこそこ名前が気に入ったのかふざけあっている
それにしても、ギンギンかギヨギヨというのは明らかに悪意しか感じないのは俺だけだろうか
今度、試しに呼んでみてもいいかもしれない
……いや、めんどくさいな、やめとこう
「レーヴァテインという言葉、お前に合っている……その言葉、炎を示す。……お前は炎のように掴みどころないからな」
「オレってば、裏も表もない超、真面目ちゃんなのにッ!心外ィ〜」
「……そういうところを言っている」
「……ふっ、くっ…くっくっ」
もうダメだ、限界だぜ、というように俺の目は笑いをこらえるための涙で溢れ返りそうになり、肩も震えている
「……冷慈さん、大丈夫ですか?」
「あ、いや、おう…ふ、くくっ…」
「あの、冷慈さんは、部活は……」
「……あ」
「……では、部活をはじめましょうか」
草薙はどうやら俺もまとめて部活の話をするようだ
まぁ、何も考えていなかったのがバレたから、だろうけど
実際問題、本当にする気がない
人間界でも、俺帰宅部だしな。ストレス発散に毎週、弓道と空手は習ってたぐらいだけど
「資料を見て、少し考えてみてください」
草薙が色々と本を配っている
もちろん俺の手元にも
「草薙、俺はいらねぇけど」
「でも、部活、決まってないんですよね?」
「……自分で決めるから、いらん」
「……はい、わかりました」
(…………一応、あるかはわかんねぇけど、空手部、とか。好きなときに活動してしたくないときはしねぇ、みたいな…うん、それがいいかもしんねぇ。それなら一応は部活動、になるしな)
考え出して、一時間、俺はあまりに草薙が必死なので、あくまで同じ人間として、部活動をしてやることにした
あまりに草薙が可哀相に見えてきたせいでもある
それもそうなるはずだ
現状が、現状なだけに
「あ、この作戦いいねぇ。次のバルドルで遊ぼうミッションは火薬10kgに〜、あと大網も使おうかな〜」
全く関係ねぇページばっかり読んでる奴に
「ぐぅ〜〜〜むにゃむにゃ、あにぃ……まってくれよぉ……ぐぅ〜」
本を枕にして完全に寝てる奴
「………………………」
本を読むのに飽きたように外を眺めてる奴
この状況故に、せめて俺くらいは…と同情した結果、まぁ一応部活動ではあるが、あまり意味のない活動時間を選んでいる限り、俺もこいつらとかわらないかもしれない
「すみません、皆さん。まだ考えている最中だとは思いますが、このままでは進みませんので、アンケートをします」
そう言って草薙が俺たちに白紙とペンを配る
「あ、俺は自分のもってるわ」
「あ、はいわかりました」
他のやつは書くかどうかも危ういので俺ぐらいは書いてやろうそう思った
草薙も大変だろうし、草薙は嫌いではないし別に少しぐらい協力的になったって損はない
「気になる部活を書いて提出してください。今日はその部活体験をしましょう。実際に触れることも大切ですからね」
ということは今日は空手部と書けば空手が出来るってことだろうか。柔道場じゃなくても、体育館で出来るし、簡単にやってからすぐに帰れば万事okってやつだろ
そう思って、俺は迷わず空手部と記入した
満田:空手部。無理なら武道系がいい
理由は俺、元々習ってたから。草薙頑張れ
そんなことを書いた紙を半分に折って前にいる草薙に提出した
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