Prologue


目の前に、俺の望んだ道が転がっていたとしても、それはきっと俺には眩しすぎて目が眩むだろう

捻くれすぎたせいで、人格がおかしくなっただけなんだろうけども


何度も神頼みもしてきた。その度に願ったこととは真逆の現実を突きつけられては神様なんてもんに絶望を繰り返した

もし、本当にいるのなら、神様なんて、背中に火でもつけて殺してやりたい



そんな非現実なことを考えても結局は何も変わるわけも無く、いつもの日常を過ごすだけだった



学校の下駄箱で、風を切る音がして、パッと腕をあげれば、俺のジャージが見るも無残な姿で飛んできていた


「わりわりー!気づかなかったわー」

「あぁ。別にいいけど。むしろ俺、今日体育出なくていいってことだしな。あ・り・が・と・よ」


そんな環境に慣れすぎてしまったせいか、今ではそれを逆手にとって相手を馬鹿にしている
ジャージなんかなくても別に困ることではないし、それよりも、どうやってこの恩を返してやろうかと、さっきの奴の顔を思い浮かべては笑いたくなる


(どんな間抜けた面見せてくれんのかね)


変人だの、人間じゃないだのそんな罵声は日常茶飯事で、俺を傷つけるようなものでもなくなっていた


そんな俺の楽しみといえば、暇になれば学校をサボって、この町の海に行くことだ
泳げねぇけど、見てるのが好きで、よく海岸線に行く。特に、砂浜ではなく、砂利だらけの岩場に行けば、面白いほど色んな雑品が落ちている

それを見ては鼻で笑う


(ゴミとかクズばっかだな。あいつらみてーな、最低の使えないゴミか)


既に折れまくっているビニール傘を踏みつけながら口の端が釣りあがった
可哀相に。と見下すかのように海を眺める

(こんだけ綺麗でも、ゴミやカスを投げつけられちゃ、海もたまったもんじゃねぇな)


そう思いながら歩き出せば、少し先で何かが光ったように見えた


近づいてみれば、それは太目の紐にアクアマリンを通している、何か。
割と綺麗だ。いや、違うな、すっげぇ綺麗だと思った


「めっずらし…誰か落としたのか?」


摘み上げれば、海水にぬれたんだろう、紐はずぶ濡れで色もくすんで見える
やっぱり流されたのか。よく綺麗なまんまだなと思って、ふと視界に入ったのはさっき、コレが落ちていた場所よりもまた少し先。

無残に打ち上げられた流木に引っかかっていた、透き通るような水色の布のようなもの
これもまた、綺麗なままだった


(…濡れてもねぇ…誰かの忘れもんか?…こんなとこに?)


きったない、こんな海岸に誰がこんな綺麗なもんを忘れていくんだろうとその布と紐のものを片手に考えていると、声が、聞えた


(助けて、助け…て…!)


「!?な、なんだ…?」


辺りを見回してもそれらしい奴なんか居ないが、声だけは確かに聞えた
次の瞬間、俺は何故か後頭部を殴られたような衝撃を感じて意識を飛ばしていた

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