不良仲間じゃねぇってば
「…探すといったのは良いですけど、一体どこにいるんでしょうか…」
「…俺のイメージだと、サボリ=屋上だけどな」
草薙と歩きながら話した結果、屋上と言った俺の案はあっさりと肯定され、そのまま二人で屋上へと行くことになってしまった
屋上っつっても、俺は正直そこまでいきたいわけでもねぇけども
高くも低くもない、なのにあの落ちそうな感じ。中途半端な高さ恐怖症の俺には向いていない場所だ
高すぎるか、低すぎる場所がいい
中途半端よくないぞ、まったく
そんなことを内心で考えながら屋上のドアをあければ澄み切った青空と心地のいい風が吹いていた
こんな中寝れたら最高だな
中途半端な高さじゃなけりゃな!
「……はっ……はっ……っく……っは……」
俺がそんなアホなことばかり考えていたからだろうか、どこからか荒い息遣いが聞こえてきて、思わず口元を引きつらせた
「……はぁ……はっ……」
苦し紛れなその声に嫌な意味でドキドキしながら草薙とそのほうへ足を進める
そこには、俺と似てる奴が腕立て伏せをして己を鍛えていた
(そりゃ、そうか…俺もちょっとアホ過ぎたな…)
「な、何してるんですか!?」
草薙が俺の横で、驚きから声をあげる
その声に俺が驚いたことは黙っておこう
「……あ?見りゃわかるだろ、鍛えてんだ」
遠慮も配慮もない、鋭い眼差しが草薙へと向いていた
その目はどこか俺が普段しているものに似ているような気がした
周りを、拒絶、せざるを得ない。己を守るために
こいつが俺と似たような理由かは知らないが、こうなっているのなら、お互いかかわらないのがベストだと俺は知っている
だが、それじゃ、草薙の『俺を合わせた10人の卒業』という目的は果たせなくなるわけで
「あの……探していたんです」
「…………」
草薙が懸命に声をかけてはみるものの、奴は無視を決め込んでいるようで、腕立て伏せを再開させだした
「一緒に教室へ行きませんか?」
「……はっ……はっ……」
俺はまぁ、いない者と見てるんだろうが、一生懸命話しかけている草薙にすら見向きもしない
こいつはちょっと梃子摺りそうだな、と俺も面倒だとは思いながらも草薙に加勢をすることにした
「おい、今日から、部活動ってのやんだけどさ、一緒にやってほしいんだと」
「……意味がわかんねぇな。やる必要性も感じねぇ」
これはきっとこれ以上の深追いをしてもあまり意味はなさそうだ
何故なら、このまま絡まれてると俺でもイラッとくるだろうから
草薙を連れて、教室に引き返そうと真剣に悩んでいたときだった
「体を鍛えることが好きなら、運動部に所属してみませんか?」
まだ、諦めずに草薙が話しかけていた
「別に目的があって鍛えてるわけじゃねぇ。暇だからだ」
「どうせやるなら目的があったほうが、きっと楽しめるはずです!だから……」
どうにか、少しでも興味を向かせようとがんばっていることがわかるが、その言葉からは、俺は何も感じれなかった
というより、草薙が、そうしてもらわなきゃ困るから言っているんであって、こいつのことを本気で心配しているというわけではなさそうに聞こえてしまったからだ
「あぁ?だから、なんでてめぇにいわれねぇといけねぇんだよ。おれに指図するな。てめぇの都合だろ、そうしてほしいのは。それともゼウスの命令か?」
「それは……」
草薙が返事に詰まっていたが、これは完全に草薙の負けだ
俺ももう何も言わないほうがいいだろう
「そもそもおれはこんな茶番に付きあいたくねぇ。何が学園生活だ」
吐き捨てるようにそう呟いたそいつを見て、俺は思わず思っていたことを口に出してしまった
「それは俺の台詞なんだよ、神様だかなんだかしんねぇけど、人間のことなんだと思ってんだ、てめーら神様は」
「冷慈さん……っ!!」
「あぁ?」
俺と、そいつの間に流れる緊迫とした空気を感じたのか、草薙が一歩前へと出て、また開く必要のない口を開く
「お願いします。卒業できるように私も応援するので一緒に頑張りましょう」
「しつけーな。いい加減にしねぇと女でも手加減しねぇぞ?」
手加減をしない、という言葉をきいて、俺の中のどこかがキレた気がした
気づいたときには、そいつの胸ぐらを掴みあげてメンチを切っていた
「てめぇ、何言ってやがんだ。相手は腐っても女。手なんか出してもいいこたぁねぇんだよ。それとも、神様ってのは本当に人間を見下してる奴らしかいねぇのか?あぁ?」
「だ、だめです……!問題なんて起こしたら……!」
草薙の制止の声も今はBGM程度にしか俺の耳には聞こえてない
こんな奴、すぐにでも海の藻屑にしてやる
そう本気で思ったときだった
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