増えた人形と説明会

学園長室から出てすぐに、空き教室だったはずの場所から声がした


「1限目の授業はなんでありますか!」

「え?」

「あ?」


そこには初めて見る生徒の顔が山のようにあった。しかも、本当に俺たちの世界の学校のように、馬鹿みたいにグループを作って楽しんで会話をしている

ゼウスの創り出した人形だとわかるまでそこまで時間はかからなかったが、それでもこの状況は俺の息の根を確実に殺してきているように思えた


「どなたか授業の詳細をご存知ありませんか!」

「う〜ん……何だったかなぁ」

「……体」

「むむっ?申し訳ありませんが、もう一度言っていただけませんか!」

「……人体について」

「あぁ!そうでありました!ありがとうございますであります!」

「……いえ」


そんな会話が聞こえてさらに追い討ちをかけられた気分だった
こんな会話が出来るって言うことは、こいつらも俺たちと同じように個性があって、人間と同じように対応をするらしい


「うーわ、まじかよ……」


横にいる草薙には聞こえないように小さく呟きながら、自分たちの教室へと足を進めた



「……そういわけで、今後は部活動をやることに決まりました」


登校するなり、草薙はその場にいる神様に説明をしだす
もちろん、いるのは昨日と同じ3人だが、3人とも部活動といわれてもピンとこないのか、キョトンというような顔をしていた
正直、俺はやりたい部活動なんていわれても思いつきもしないけど、と思いながらもその説明を黙って聞いておく



「安心してください、皆さん。1から説明しますね」


そう言って、草薙が教壇に立つと、教室のドアが開き、トトが立っていた


「ほう、今朝は貴様がそこに立ったか。では私は不要だな」

「え?私はただ部活動の説明を……」

「内容はどうでもいい。ではな」

「ま、待って……!」


あまりにも理不尽な態度の教師と慌てる草薙に俺は笑いそうになったのをなんとかこらえるために、机に突っ伏した
多分、肩は震えているだろう


「カゼカゼ?どうしたんだい?肩が震えているよ?」

「い、いや……なんでもねぇよ……」

「……冷慈さん、笑わないでください…。まぁ、丁度いい機会なので、今日は部活動について徹底的にやりましょう」


そう言った草薙は黒板に代表的な部活動を書き出していく
もちろん、俺はどれも知ってはいるが、あまり興味の引かれるものはない


「……吹奏楽部、文芸部、園芸部と、だいたい以上が主な部活動になります。この中から皆さんがやりたいものを選んでもらいます。とはいえ、口頭で説明しただけでは詳細はわからないと思いますので、これから図書室まで移動します。関連する書物があるはずなので、そこで興味のある部活の情報を得ましょう」

「なんかワクワクしてきた。ワクワクしてきたよ!新しいことをはじめるっていいね」

「しかし、草薙結衣。説明からすると部活動は大勢でするものでは?俺たちだけでは心もとないかと」

「……確かに」


俺は部活動を選択はしたが、選択しただけであって、するとは言ってない。もちろん、一人で、好きなことがあればやってもいいかなとは思うけど


「皆さんを誘ってみましょう。やってみる価値はあります。今日は時間もありますし」

「……まじでか」

「人数も多いし、手分けしようか。わたしたちは親しい相手を当たるとして……あなたたちはどうする?」


俺の呟きはバルドルの提案によってかき消されてしまったが、俺としてはあまりそう言った面倒なことはしたくない


「私は……日本の神様のところへ行きたいと思います」

「俺はその辺適当にうろついていた奴、ひっ捕まえるわ」


俺と草薙の声が被ってしまった


「……あー…どうすっかな」

「あの、冷慈さん、そのままだとまた体育館裏に行ってしまいそうなので、よかったら一緒に来てくれませんか?」

「……俺が?」

「はい。尊さんは、なんだか冷慈さんに似ているような気がして…」

「……、もしかして、それ、俺みたいな見た目の奴?」

「はい、そうです」


草薙に言われて、この間すれ違った神様が日本神話の神だとやっと把握した
確かに俺に似ているような気もするが、それはあくまでも、見た目の話
中身まで似ているかは正直まったくわからない

それでも、離さないと言わんばかりに草薙が俺の制服を握ってくるので、断るわけにもいかず、渋々、頷いておいた

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