運命の選択01


翌朝、俺は学園長室に呼び出された。それはどうやら草薙も同じだったようで、途中からだが二人で、ゼウスの待つ学園長室へ足を進める


「昨日はご苦労だったな」


そこにいたのは、初めて会ったときと同じようなガキの姿をしたゼウスだった
なんだか俺たちで遊んでいるような気がして、正直気に食わないがこの際、容姿はどうでもいい

早く、本題にいってほしかった


「早速、今日より授業に入ってもらうが内容はトトに一任してある。お前らから意見があるのなら彼奴に伝えろ。わかったな?」

「わかりました」

「あぁ……」

「授業以外で要望があれば、この場でワシが聞こう」


そう言って、ゼウスは目線を細めた。その視線の先には俺と、草薙がしっかりと映っているようだった



「いくつかあるようだな。言ってみるがいい」


そう言われて、草薙は考え込むように下を向いて、悩んでいる
その隙にと、俺は昨日困ったことがあったのをゼウスに伝えることにした


「あのさ、俺の寮の部屋、台所の蛇口から水が出てこなかったんだけど」

「あ、あの、私も寮の部屋で色々不具合があったので、改善していただきたいです」

「ふむ……」


俺と草薙の要望を聞いて、ゼウスが何か考え込んでから、また口を開いた


「ならば世話係を手配しよう。不明な点はそ奴に問うがいい。問題の点も改善させよう」

「ありがとうございます」

「うっす」

「他に要望はあるか?」

「いや、俺は特に今のところは」


ゼウスがなにやら優しげに聞こえるトーンで聞いてくるが、俺はその点さえ改善してくれれば今のところは要望はない
元々、欲の薄い人間なせいもあるんだろうか

これで、やっとこっから出られると思ったときだった
俺としては、最悪な要望になることを、草薙が言った


「校舎の規模に対して、生徒数が少ないと思います.実際の学校はもっと生徒がいますし、可能なら人数を増やして人間の文化に近い状況にした方がいいかと」

「……っ」

「冷慈、何をうろたえておる。この学園に呼ぶべき神はもう存在せん。しかし、神以外を用意することは可能だ」

「神様以外というのは?」


草薙がそう問えば、ゼウスは手をパンっと叩いて鳴らした


「……たった今、学園に見合う数の生徒を創り出した」

「この一瞬で……?」


本当に余計なことをしてくれた
俺としてはこのまま不登校の奴も合わせて、教室にはたったの5人、そのまま卒業したかったのがまぎれもない本心だった

この場になって、自分がまだイマイチ吹っ切れていなかったのだと実感はしたが、したがゆえに、その要望は俺には酷に突き刺さるものにしか聞こえなかった

そんな俺にはお構いなしに、2人は話を進めていく


「姿は人間だが、命は持たぬ。言うなれば人形だ。お前たちと同じように寮で生活をし、校舎では生徒として振る舞う。そして同じ人形の教師から授業を受ける。数が足りねば、また増やしてやろう。……お前の要望はそれだけか?」


流石にこれ以上はないだろうと思って、モヤモヤとした機嫌の悪いまま、ここから今度こそ出ようと思ったときだった


「不登校の生徒がいるのですが、彼らはどうすればいいのでしょうか?」


草薙の少しだけ困ったような声が聞こえた
……そうか、俺はそいつらがいなくてもいい、とは思ったが、草薙に課せられたのは、俺を含めた生徒10人を卒業させること
不登校がいては話にもならない


「どうにかしろ。彼奴らを動かすのもお前の仕事だ」

「頑張りたいと思いますが、上手く出来るか心配です」

「打つ手がないときにはワシの方で力を貸す。だが、まずはお前だけで行動しろ。それに、冷慈も動かすといい。人間の間では言うだろう、目には目を、歯には歯を。と」

「……わ、わかりました。私からは以上です」


ゼウスの言った言葉に、悪い意味で驚いた。つまり、俺がサボろうとしていたことも、このおっさんは見抜いてしまっているんだ


「では、ワシから要望を出すとしよう。学園を構成する大きな要素として、生徒会、そして部活動というものがあるな?」

「はい。その2つだけでとはいえませんが……」


まぁたしかに、その2つが大きな要素ではあるだろうが、他にも委員会とかやら、なにやらあると思うんだが


「どちらかの活動を行え。それが神々に対し、より学びを促すだろう」

「なぁ、その二択だけなのかよ。他にも色々あると思うんだけど」

「こういうものは単純でわかりやすいものがいいと相場で決まっている。さぁ、どちらかを選ぶがいい」

「え……ですが……」


俺は性格上、生徒会には向いていないから必然的に部活動を選択することになる
一方で草薙はいきなりの選択に完全に迷っていた


「どうした、草薙よ?お前が決めぬのならワシが決定を下すか?」

「わ、わかりました!自分で選びます!」

「……、俺は部活動。生徒会とか向いてねーからな」

「あの、私も部活動を選びたいと思います」


俺と、草薙の選択が決まったのを聞いてから、ゼウスが真剣な顔で、また俺と草薙を見つめる


「任せたぞ、草薙結衣よ。神々に人間そして愛を理解させるのだ」

「はい」

「満田冷慈。お前もだ。神々に教えつつ、少しでも、彼奴らのことを理解するように励め」

「……理解、ねぇ。……出来るだけ頑張ってみるか」


選択もして大雑把だが、進む方向を決めた俺と草薙はやっと、学園長室から外へ出た


[ 13/82 ]

[*prev] [next#]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -