自分の寮で
寮に戻った俺は一目散に手を洗って台所に立つ
冷蔵庫には一応食材も入っていたから、もう寮の食堂なんかに行くよりは、ここで自分で作って食ったほうが気楽でいいかもしんねぇ
「何作るかな……。もうオムライスとかでいーかな」
材料を出してチャッチャと作っていく。俺は見た目上、料理なんかしなさそうに思われがちではあるが、意外と好きでしょっちゅう作っていて、料理にはうるさい方だと思う
料理をいているときは何気にストレス発散にもなってるし、食堂とかで食うよりも、自分だけの空間で食べることのほうが俺には本当に楽だ
「よっしゃ、今日も上出来か」
中々綺麗にできたそれに満足感を覚えて、食卓に出す
一人で、部屋にあったコンボから音楽を流しながら、飯をつつく
食べながら今日のことを思い出してもう色々とありすぎて、俺も軽いパニックだったな、と思った
まぁ、全部がいきなりすぎて、思考が追いつかないっていうほうが、正論なのかも知れないが
そそくさと飯を口に放り込んで、片付けをしようと、台所の蛇口を捻る
「……は!?」
いくら捻れども、水の出てくる気配すらしない。
これはどうしたらいいのか、と一瞬、思考を回した
「……風呂は、流石に、出るよな?」
もし、風呂の水かお湯、どっちかが出れば、俺としては助かるんだが
それをどうにかしてこっちにもってくれば、皿も洗える
「頼むぞー…」
風呂場の方の蛇口をキュッと捻れば、水もお湯も出てきた
「……助かった。よし、洗面器にでも汲んで持っていくか」
洗面器いっぱいに汲んだお湯を持って、また台所に戻って使ったものを片っ端から洗っていく
やっぱり、こういうこのは放って置くとそのまま散らかしそうだし、片付けねぇと後が大変だ
「はぁ…やっと終わった」
何回かお湯を汲みに行く作業は大変ではあるが、そのおかげで、やっと片付いた
そのまま、洗面器を持って風呂へと直行する
一番に、洗面器を一旦洗ってから、今日の疲れを癒すように風呂に浸かる
「くぁー…いいなぁ。夢にまで見た一人暮らしみたいなもんじゃね。寮だけど」
寮とはいえど、基本的に食堂にも行かないだろうし、自分で料理もするだろうから、地質一人暮らしと変わらないだろう
「……明日からが、本番とかまじ、鬼畜……」
綺麗で真新しい浴室の天井を見ながらポツリと呟いた途端に、思考が悪いほうへと走っていく
確かに今日は楽しかったほうかもしれない。たった一日で、俺としては珍しく、他人ともちゃんとした内容を喋った気がする
でも、それが、これがいつまでも続くものかといったら、きっとそうじゃない
信じても、信じても、届かずにむしろ、心を折られるのがオチなのだと俺は知ってしまっているから
「……きっと、またいつもと一緒なんだろ」
またすぐに俺の意思とは反対に孤立して、知りもしない誰かに何かを言われて。そのたびに、怒りも苦しみも味わって
反抗をすれば、それはそれでまた面白がりやがって、結局はずっとどこにいても面白がられて
「……人間って不公平すぎんだろ」
そうやって他人を平気で傷つけて、笑っていてそれがどれだけ悪いことかもわかってないような奴が、なぜか周りに人気で、人が集まって
標的になった人間は、周りに誰かがいてくれたとしても、その誰かすら巻き込む形になって、結局は自分から距離をおくしかその人を守る方法もなくて
「……はぁ」
ため息を吐いて、風呂から上がる
とにかく今の俺は、前も向けない、後ろも向けない。そんな中途半端な状態なままなんだということだけは、風呂でゆっくり考えたおかげでわかったけど
風呂から上がった俺は真新しいベッドへと体を沈める
今日の疲れからか、久しぶりに他人と関わりをもったことへのストレスなのか気づいたときにはそのまま寝てしまっていた
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