式辞と宣誓

その言葉とともに壇上に上がってきた人物に俺は嫌悪感を抱く
俺をこの場所へ呼んだ、神様

いや、当然のように神様全般は大嫌いだが、どうして俺なんだ
未だによくわからない怒りが俺の中で沸々とこみあげる


「……式辞。諸君は我々神の領域である天界と、人間界のを繋がりを改善すべく集まった存在だ。自覚はないやもしれんが、諸君の行動が未来を変える。各自その事実を意識し、学園生活を送れ。……とまぁ、堅苦しい挨拶はここまでだ。1人も落第者を出さず、元気に卒業式を迎えようではないか!ワシからは以上だ」


入学してすぐ、卒業の話かよ。と心の中で悪態をつく
おそらく、顔には出てしまっているだろうが、誰も見てはなさそうだし、入学式に参加してる時点で褒めて欲しいもんだ


「……生徒代表、宣誓」

「はい」


返事とともに壇上へと足を進めるのはアポロン
そのまま、ゼウスと向かい合ってはいるが、何故か表情はお互いに厳しいままだった

もちろん、俺の目の据わりようも同じくらいなんだろうが


「宣誓!我々生徒一同は本日この学園へ入学しました。突然のことに驚いています。ほんとのほんとに驚いています!」

「ア、アポロンさん……」


アポロンの己の感想が追加されてしまっている宣誓に草薙が焦っている
そりゃそうだろうが、俺たちは今は下から見ることしか出来ないのもまた事実


「でも、これも何かの縁!今後1年間は神ではなく人間として彼らの歴史や文化、愛を学びたいと思います」


何かの縁なんてそんな軽いもんですむなら警察はいらねぇ。なんて馬鹿なことを思いながらもほんの少し、この現状に理解と諦めがついてきていた
もう嘆いても怒っていても仕方ないんだ
どうせ、やれることをやらねぇとゼウスは俺を帰してもくれないだろう


「この素敵な仲間たちと先生方のため……そしてこの学園の意志に従い、生徒10名全員卒業することを誓います」


アポロンが振り返ってまるで確認するかのように俺たちを見てくる
そんなことしなくても、もう、俺にも草薙にも残された道はコレしかないんだ
やらなきゃだろう、と急に俺の思考が現実味を帯びだした


「入学生代表、アポロン・アガナ・ベレア……。……よしよし!皆、頑張ってこー!」


最後に余計な言葉が入った気もするがそれのおかげで、前列の3人は顔を見合わせて笑っていた
俺も、少しだけ、表情が緩んだと思う


「……以上で入学式を終わる」


最後にトトが締めくくって、この学園での最初の行事が幕を閉じた
でも、これから先が重要なんだ、俺がどう動くか

今までと同じ俺でいいのか、変わるべきなのか
ここの人間、いや同級生となった神様くらいは信用してみるのか、逃げるのか

俺にとって重要なのはここだった

この生活を受け入れて、元の世界よりも、楽しもうとする俺と、どうせこの関係もすぐにあの世界と同じになるに決まってると捻くれた俺がいて
どっちも間違いではない、と自分では思う


結局は、俺は自分が可愛いだけなんだろう、情けねぇな。とも思いはするが、やっぱり、そう簡単にはこの壊れた心が修復するわけもない


「……さーって、片付けるか。これも、人間の生徒のすることだしな」


今考えていても仕方ないと思い、まずは暗い思考から切り替えるために体育館を片付けることから提案する

これが終わったら、寮に戻ってゆっくり考えればいい
1年間ある。ゆっくりでも大丈夫だ



そして、片付けも終わった頃、空はもう暗かった
5人で寮まで戻り、それぞれの部屋へと帰っていく




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