天然×天然 | ナノ
・天然×天然
この感情を名付けるにはまだ早い








俺は朝ちょっとだけみんなより早く起きて食堂にいく。
たいていは一番乗りで、食堂はしいんとしている。
そして一番隅っこの席をいち早く陣取ってぼおっとするのはもはや日課だ。
たまに出遅れて飛鷹あたりに先を越されるのが少し腹立たしかったりする。
そして最近は、なんでか鬼道くんが俺の隣へやってくる。
鬼道くんが当然のようにおはようって言ってくるから、俺もおはよ、って返す。
前は口をききもしないし目が合ったら睨み合っていたのになんか変な感じだ。
変な感じ、だが密かにそれに嬉しさなんておぼえたりして。
それに鬼道くんの十円玉が挟めそうなほど深かった眉間のシワも心なしかやさしくなった気がする。(まだまだくっきりだけどね)
これで鬼道くんの顔が将来老けて見られることが回避できたらいいね。




「鬼道くん、おはよ」
「!お、おはよう」




何故か驚いたような鬼道くん、変なの。
いつもいつも先を越されて悔しいから、先に挨拶をしたらびっくりされた。
先に言うのは、ちょっとこそばゆいと思った。
鬼道くんの様子があまりにへんだったからどうしたのか聞いてみたら、不動のほうから挨拶されてびっくりした、と鬼道くんは言った。
それに続けて、鬼道くんは、びっくりしたけど嬉しいな、と言った。
鬼道くん、嬉しいんだって。
俺から挨拶したから嬉しいんだって。
俺もつられて嬉しくなって、勝手に口からふふっと笑い声が出ちゃった。
鬼道も眉を下げて、でも口角は上がって笑っていた。
しかめっ面も嫌いじゃないけど、笑っている顔が好きだなあと思った。
俺は思ったことはすぐ口に出す主義だから。




「俺、鬼道くんの笑った顔、すき」




鬼道くんは俺の言葉をきいて一瞬ぽかんとして、それからまた笑った。
ああ、その、表情。
鬼道くんは笑いながら、俺も不動の笑った顔がすきだなあと思ってたところだ、と言った。
また俺の嬉しいがひとつ増えた。
鬼道くんの隣にいるとたくさん、今までは見えなかったきらきらしたモノたちが見えるから、そこはいつのまにか俺のお気に入りになっていた。
こうやって話すようになって3ヶ月ほどしか経っていないというのが嘘みたいだ。
そのまま、二人は今日の練習はなにをしようかとか、今度のイタリアとの練習試合はどう攻守を組み立てようとか、サッカーの話をしはじめる。
二人ともなんだかんだで円堂と同じただのサッカー馬鹿なのである。
早々に朝食をトレーに乗せた円堂が不動の向かいに、その隣に豪炎寺が座った。




「二人とも、楽しそうだな!」
「え、まじ?」
「ああ、すごく仲がよさそうだな」
「そう見えるか?」




俺が鬼道くんを見たら、鬼道くんも俺を見ていて、つまりは目が合って照れくさかったからお互いにくすくすと笑った。
豪炎寺と円堂は、びっくりしたような顔で俺たちを見た。
なんだよ、そんな顔しちゃってさ。




「鬼道くんと不動くんって、もしかしてつきあってるの?」




いつもの三割増しで輝く笑顔を振りまいて、吹雪か二人に問い掛けた。
隣ではヒロトが意味深な含み笑いを浮かべて立っている。
それに二人同時で「そんなわけないだろー」なんて当然のように言ってのけた。
それを近くで聞いていた佐久間は呆れたとでも言うように溜め息をひとつついたのであった。













知ってるか?あいつらあれで付き合ってないんだぜ……?
なきどふどが書きたかった。