novel | ナノ



「さーん、にーい、いーち」


「「明けましておめでとうございまーす」」



【君と。】



「やー、一年過ぎちゃったねぇ」
不動がテーブルに頭をあずけながらへらりと笑った。

「ああ、そうだな……」

鬼道もつられて微笑んだ。
今年は不動と過ごす二度目の正月だ。

「去年は色々と……面白かったよ」

思い出したように不動は皮肉な笑みに変わる。

確かに去年はしょっちゅう喧嘩をしていたし、一度不動が出ていったときはどうしようかと本気で焦った。

「俺はこの一年で、お前のことを大分分かってきた気がするよ、」
でも、と続けようとすると不動に「わーってるって」と止められた。

「分かってるよ、言いたいことは」

眉毛を寄せて恥ずかしそうに頬を染めて目を伏せる不動。

「………かわいい。」

しまった。本音が出た。

予想通り、不動はさらに赤くなって怒ったように唇を尖らせた。

その隙を見て俺は続けた。

「まだ、まだ俺は知らないことは多い。一緒にいた時間より一緒に居なかった時間のほうが長い。
だから……」

ずっと、そばにいたいんだ。


その言葉を聞くと不動は顔を伏せて腕で顔を隠してしまった。


「―――――っば……か………!」

そしてこたつに入れていた足を勢いよく蹴られた

「いッ………つー……!!」

「馬鹿馬鹿、きどうくんのばーか」

追い打ちで二、三回蹴られる。

「い、痛い…不動………。」

「馬鹿…………………すき、有人。」

今度は、俺が真っ赤になる番だった。

「………きどうくん顔真っ赤。」
「見てないくせに。」

「分かるもん。」

「そうか。」


なんとなく、笑えてきて声が出てきそうなのを必死に堪えた。

そっとこたつを抜け出し、対面に座っている不動の隣へと移動する。

そのまま、中学のときから伸ばして、男にしては長めの茶色いくせっ毛を撫でた。


「……かわいい。」

「だから言うなって……。」

ようやく不動の顔が上がった。

不動は見ているほうがかわいそうに思うぐらい赤くなっている。

「好きだぞ、不動」

「うん。知ってる。」

「もう一回名前で呼んでくれないか。」

「馬鹿か、お前。」

眉を寄せてくしゃっと笑う。その表情が、俺は愛おしくてたまらなくて。

「今年もよろしくな。」

「こちらこそ。」


どちらからともなく、唇を重ねた。







(来年も、再来年も、ずっとずっと君と。)













来年もよろしくお願いします!!!by管理人