novel | ナノ




「さむい」
「ほんとになあ」


昼休みの教室にはまったりとした平和な空気が流れている。
しかし、鬼道だけは険悪な空気をかもしだしていて、佐久間はハラハラしていた。
原因は、彼の恋人不動である。
寒いのかなんなのか知らないが、源田にべったりくっついて離れようとしない。まあ源田は確かに体温が高めで、こんな寒い日にはくっついてたらきもちいいのは、とても分かるけれども。
鬼道はあれでいて相当嫉妬深いところがあるから、不動はそれをたまにからかって楽しんだりする。
だが今回は違うらしい。不動、朝から震えてたもんな。
本気で寒いらしい。
また、源田も源田で普通にしているから、鬼道は怒るに怒れないまま、自分の気持ちを持て余しているのだろう。
もちろん、俺だって嫉妬はするが、源田があれだから怒るのも無駄だと知っていたからなにも言わない。いや、言えないと言ったほうが正しいか。


「あ、雪」
「ホントだー」


源田が声を発したら、みんなの視線が窓へ向いた。
窓の外には、ふわふわしていそうな雪がゆったりと降っていた。
不動は源田の上から飛び降りて窓に近寄っていった。
それを追いかけて、鬼道も。


「初雪じゃん」
「…そうだな」
「なーにすねてんだよ鬼道ちゃん」
「拗ねてない」
「鬼道ちゃんかあいー」


へらっと不動は笑って鬼道の頬を軽くつねった。
それに対する鬼道は眉を下げて困った顔をした。頬はだらしなく緩んでしまって、先ほどまで機嫌が悪かったのが嘘のようだ。
そんなほほえましい姿についにやけたとき、後ろからぐいっと腕を引かれて、倒れこんだ。
その先は源田の膝の上。
突然のことに、ついヘンな声を上げてしまった。


「っ、源田ァ!?なにすんだよ!」
「…二人がいちゃついているのを見たら…羨ましくなって」


ぎゅう、とさらに力を込める源田がとてつもなく愛おしくて、可愛くてあとちょっと恥ずかしくて顔が熱い。
なんだよお前、さっきまで不動とベタベタしてたくせにさ、羨ましいとかさ、人の見て自分もそうしたくなったとか、なんだよそれ。
ずるい、そんなの。ずるい、可愛すぎるだろうバカ。

ひとまず赤く染まってしまった頬をどうしようかと、俺はため息をついた。
鬼道は、さらに不動にからかわれてついに真っ赤になってかわいそうだった。







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