novel | ナノ





空は綺麗に晴れ渡って、冬だからなのか澄んでいた。
最近の俺は、どうも身体の調子がおかしい。
身体が急にかあっと熱くなったかと思えば、息もできないぐらい心臓が締め付けられて苦しくなる。
あの鈍感な鬼道くんにすら気付かれるくらいに俺はおかしかったらしい。
「大丈夫か?」と心配そうに眉を下げて聞いてきた。
気付かれたのが悔しかったのか恥ずかしかったのか、それはよく分からなかったけど、また身体があつくなった。



「不動、隣いいか?」
「!お、う」



あーあ、あっつい。
控えめに聞いてくる鬼道くんが可愛いと思ってしまった。変なの、俺も鬼道くんも男なのに。
しかも鬼道くんはいつも通りゴーグルにマントなんていう格好である。可愛いもくそもない。
やっぱり俺はおかしかったのだ。

俺が一人屋上でぼーっとメシを食っていたら鬼道くんがやってきて隣に座った。
別にあえて一人でいたから寂しくはなかったけれど、鬼道くんが来てくれて、嬉しい。
実際にはなかなか素直に言えないけれど、本当のところは一人でいたら鬼道くんが見つけてくれて、隣に座ってくれるのが嬉しいんだ。
でも、最近の「嬉しい」は何か以前とは違っていて。
わからない、わからないよ。誰かに対してこんなやさしい気持ちになるなんて鬼道くんと出会う前はしらなかったんだから。



「不動?」
「う、えっ!?」
「どうしたんだ、さっきから黙って。やっぱり何か変じゃないか」


気付いたら目の前に鬼道の顔があったから、びっくりした。
今日はゴーグルをしていないから、綺麗な赤い目がさらされているから、余計にドキドキした。
鬼道くんの睫毛、長いな、すっごくきれい。



「…不動」
「なーに?」
「俺は、不動になにかしたのか?」



どうしてそんなことを聞くんだろうと俺は不思議に思った。
鬼道が言うには、俺がおかしいのは決まって鬼道が近くにいるらしい。
そんなの、どうして分かるんだと思ったら、鬼道は俺のことを観察していて気付いたんだと言った。
その末に鬼道は、俺に何か気に障るようなことでもしたのかと考えたらしい。
自分なんかに鬼道が気を遣っているのは、なんだか鬼道らしくなくて、笑えた。
なんで笑ってるんだと顔をしかめられたけれど、そんなことを気にしている余裕がないくらい、勝手に頬が弛んでしまった。
それに鬼道は顔を赤くする。
なんでだろう、笑われたことがそんなに恥ずかしかっただろうか。



「……可愛い」
「は?」
「!いや、なんでもない…」



ありえない言葉が聞こえてきた気がして、つい聞き返してしまった。
鬼道がなんでもないと言うのだから、きっと気のせいなのだろうと思った。
鬼道の顔がさっきより赤くなったように見えるのも、きっとそうなのだ。
俺が鬼道をじいっと見ていたら、鬼道が急に顔をこっちに向けるから、かなり驚いた。



「俺、俺は、不動のことが好きなんだと思う…多分」
「…うん?」
「不動はどうなんだ」



鬼道がやけに神経な表情で聞いてきて、俺は正直笑いを堪えるのに必死だった。
だって鬼道のそういうところが、面白くてかわいくて仕方ないんだから。
「おれも鬼道くんのことすきだよ」って言ったら、鬼道は心底困ったような顔をした。
今日の鬼道は、ちょっと訳が分からない。



「そういう意味じゃない…」
「はあ?」
「なんでもない…」



なんだよ、鬼道くんだってヘンじゃんか。









俺はとっくに自覚しているんだ、不動に対するこの気持ちがどういうものなのか。
不動が俺の前だけで赤くなったりうろたえたりするものだから、俺はすっかり期待して、不動も同じ気持ちだと思ってたんだ。
でも、どうやら不動はまだ「そういう」意味での好きだとは思っていないらしい。
自分の思い込みだとしたらそれは凄く恥ずかしいのだが、不動は俺のことが好きなんだ、と思う。

ああ、早く自覚してくれ。
俺にはこの境界線を越える勇気がまだないから。
この心臓が、もたなくなる前に、早く、















友人以上恋人未満なきどふど
よく分かってないあきおちゃんと自覚してる鬼道さんでした。

暖かいお言葉ありがとうございます!励みになります〜
23000ありがとうございました!!