novel | ナノ

コウモリさんと恋
※鬼不吸血鬼パロ









目眩がする。練習しているときも勉強をしているときもここ最近はいつも。
それこそ源田や佐久間に心配されるぐらいには。
不動は興味が無さそうにこちらをちらりと見るだけだった。
原因は分かっている。血がたりないのだ。
貧血とかといった類ではなく、文字どおり俺の身体は今まさに血を欲していた。

俺は、吸血鬼だ。
しかし吸血鬼といっても個人差があるようで、よくある映画などのように毎日他人の血を吸う必要は鬼道にはなかった。
足りない、と思うときは定期的ではなかったが、ここ数年は全く血を吸おうなどとは思っていなかった。
しかし今、まさに血を摂取したくてしかたがない。
それもなぜか、不動の血を。
帝国の制服はかっちりしていて首もあまり見えないが、部活のときとなると話は別で、晒された首に今すぐ噛み付いて、その甘美な血を啜ってしまいたい衝動に襲われる。
普段だって、白い手の甲にうっすら透けて見える血管を見てごくりとつい喉を鳴らしてしまう。

俺の嗅覚は人のそれよりも発達しているらしい。
不動からはなんともいえない甘い香りを放って、あまりにも美味しそうでいつまで我慢できるかとヒヤヒヤしている日々。
また部活の時間が来るのかと、サッカーができることへの楽しみの反面、我慢を強いられているため気が重い。
そんな放課後のことだった。




「きどーちゃん」
「何か用か、不動」
「ついてきて」




不動は鬼道の手を取って教室から鬼道を連れ出した。
佐久間は不安そうにそんな二人の背中を見送った。

着いた先は屋上。日はもう低く、どこかしこも橙色に染まっている。
ここまで連れてきて、不動はなにをしようと言うのだろうか。
と思っていたら、いきなり不動が制服の上を脱ぎ始めた。
ばさりと乱雑に上着を脱ぎ捨てると、不動はワイシャツのボタンの上3つを開けて、鬼道を見つめた。
なにを考えているのかわからない顔だ。
その白い喉元がどうしようもなく鬼道を誘っていた。




「ほら、」
「ほら、って……なんなんだ、いきなり」




擦れた自分の声がなんだか格好悪くて情けない響きだった。
鬼道は自分より背の低い不動に気圧されてしまっていた。
不動はささやくように、俺の血、飲みたいんでしょ?と言った。
そして不動はあろうことか鬼道に密着し、胸元に顔を埋めてきたではないか。
目の前いっぱいに不動の香りを感じて鬼道はさらに焦った。
というか、どうして俺が吸血鬼だということを知ってるんだ。
頭は相変わらずくらくらしていて、正常な思考ができそうにない。
不動が、早く、と言って鬼道をせかすから、鬼道は混乱した頭で不動の首に唇を寄せた。


つぷりと歯を突き立てると、不動の肩がビクッと跳ねた。
動かれると吸いづらいので、腰に手を回して不動の体を固定した。
不動そのあと、力を抜いたタイミングを見計らって、驚かせないようにゆっくりと血を吸った。
舌のうえになんともいえない味が広がった。やはり想像通り、不動の血は美味かった。
不動の体温と同じく生暖かくて、そして不動の香りそのままで甘い血。
ゆっくりと味わうように舌の上で転がす。




「っふ……は」




不動が熱い息を吐いて身悶えた。
それにはっとして、不動に負担をかけては申し訳ないと思い名残惜しいが口を放した。
正直なことを言うと、不動の血をもっと味わっていたかったが、もう頭がぐらぐらするのはおさまったし、量はもう十分だ。
大丈夫か、と声を掛けたら、不動はゆっくりと鬼道を見上げた。
その不動の表情に鬼道は息を飲んだ。
瞳は潤み、頬を染めて、熱の籠もった視線を送ってくる鬼道の腕の中の不動はかなり煽情的だった。
乱れた息と共に、その唇は鬼道の名前を紡いだ。
鬼道は一応心の中で不動に謝罪して、その柔らかな唇に噛み付いた。





(その衝動は、そう、まるで欲情しているみたいな)











ハッピーハロウィーン。
トリックオアトリート。

カタカナばっかりで気持ち悪い。
尻切れトンボになったので続き書きたくなった
吸血鬼をコウモリって書きたくなるのは某曲の影響です。