novel | ナノ


※FFIの後の話

不動が帝国に居ます。

若干鬼不のようなそうでないような。



理解不能






ちらりと隣の席に座ってるあいつを見たら、目が合った。

気に食わないから睨み付けたら、一瞬冷めた目でこっちを見てから目線をそらした。

……腹立つ。

FFIで和解したとはいえ、やっぱりこの態度は腹立つ。




部活のときだってそうだ。

今日は練習している俺たちをじっと見てるばかりで、自分はベンチに座って見てるだけ。

俺が「お前、まだベンチがお気に入りなのか?お似合いだな」と皮肉っぽく鼻で笑ってやったら、あいつは馬鹿にしたような表情になって鼻で笑った。


まるで俺が見下されてる、みたいな。(まあ実際そうなんだけど。)

こんなやつに。


腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ!!!


俺は足元にあるボールを渾身の力で蹴った。




放課後、夕日が沈みかけてきたときぐらいに練習は終わる。

でも俺は自主トレしてから帰るから、更衣室に行く頃には薄暗くなってしまった。

汗をタオルで拭いながら更衣室にたどり着くと、既に灯りが点いていた。

『こんな時間まで……誰だ?』

恐る恐るドアを開けて中に入ると――――――



「不動…………?」



不動はどうやら眠っているようで、頭がかっくりかっくりと揺れている。

俺は足音を立てないように細心の注意を払ったはずなのだが、

「んあ……だれ……?」

ぱち、と不動の目が開かれた。

「あ、えっと……」

「なあんだ、佐久間かよ」

「なんだとはなんだよ。」

何時もならここで口喧嘩が始まるはずなのだが、不動は普段の様子とは打って変わって、ぼんやりとしながら話す。

どうやら、不動は低血圧なようで、若干寝呆けているようだった。

「鬼道ちゃんじゃなくてよかった……。」

「あ……?」

自分がイラッとするのが分かった。

こいつが、鬼道の名前を口にするだけで、イライラするのだ。

なんで、ずっと傍にいた俺を差し置いて親しくなってるんだよ…!
「鬼道ちゃんだったらさ、説教されてただろーからさ。

風邪引くだろーとか、危ないだろとかさ。

ちょっとめんどいじゃん?

だから、佐久間でよかった。」

不動は、ふふ、と小さく笑った。
「お前な…………!」

俺のイライラが頂点に達した。

「鬼道の気持ちを何にも分かってねぇな、てめえ!!

鬼道はな、お前みたいなひねくれた奴も関係なく心配してやるくらい優しいやつなんだぞ!

少しぐらい、ありがたいとか思え!!!」

不動は、真っ直ぐ俺を見ていた。
いつもの皮肉っぽい笑みを浮かべている不動とはあまりにも違いすぎて、俺は驚いて言葉を詰まらせた。


「………知ってる。」


不動は、俺を見ながらぽつりと言った。

「鬼道は優しいよ。

俺みたいな奴を帝国に誘ってくれたことに感謝だってしてる。

そんな鬼道だから、お前はあいつが好きなんだろ?

……………特別な意味で、さ」


ずばり、と言われて俺はどきりとした。

「な、んで…………」

「みてりゃわかるって。」

その言葉を聞いて、俺の思考はフリーズする。

今、こいつは何と言った?

「ふ、不動………?」

「お前さ、分かりやすすぎ。

鬼道のこと、ずっと見てるし。」
「なんで……お前…んなことに気付いて………。」

「見てたから。」



「俺、見てた。佐久間のこと、ずっと。真帝国のときから」



その言葉は不動の目みたいに真っ直ぐで。
普段のひねくれた言葉ではなく、ただ素直な。

そしてそれが、特別な意味を含んでいるというのを佐久間は感じた。


「――――――っ!」


どうやら、俺はこの状況に耐えられそうにない。


咄嗟に走って部室から出ていった。

異常なぐらい、顔は火照っていて、少々冷たい風が心地よい。

とりあえず、ランニングでもしてから帰ろうと佐久間は混乱した頭でそう思った。




『明日、どんな顔してあいつに会えばいいのかわかんねぇ………!』







落ちなかった……。

佐久間は、自分があきおちゃんのことが実は好きだということに気付くのが遅いといいなあと思います。
うだうだしちゃうがいいさ!!

多分、続くと思われます。

しかし、この少女マンガ的な感じ、どうにかならないものか…。