novel | ナノ

小さくて愛しいあなた











不動はよく俺の部屋へやってくる。
特に用事はないらしく、特に何もしない。
一言二言話して、あとは黙ってくっついていたり、不動がベッドでごろごろしていたりする。(その間、俺は肩身の狭い思いをする)
今日も今日とて「邪魔すんぜ」と「風呂入った?」という言葉しか不動は発していない。
もちろん自分からはなにも話せない。


不動は何を考えているのかよく分からないが膝の上に乗ってきた。
身長差をいつも以上に感じる。
膝の上に向かい合って座る不動は軽かった。






「お前さ、」

「ん?」






それだけ言うと、胸のあたりにぺたんと不動は手を当てた。
ぺたぺた。
やたらと真面目な表情で、触る。





「どうしたんだ」

「ずるい」

「は?」

「お前、細いのに筋肉付いててずるい」






頬を膨らませて、唇をとがらせて。
そんな可愛いことを言うものだから。
俺は脂肪はねえけど筋肉もないからさーもやしみたいでやだ。
不動は続けた。
甘やかしてやりたくなって頭を撫でたら、なぜかムッとしたような顔をされた。






「いっこしか違わないのに」

「好き嫌いするからだ」

「トマト以外は食うもん」





不貞腐れたように言う不動は腰に手を回して飛鷹に抱きついた。
ふわふわとした髪が首やら顎のあたりに触ってくすぐったかった。
「ほんとお前かっこよくてずりぃ」
ぼそぼそ不動が言う。
自分で言っておいて恥ずかしいのか顔は上げない。
胸元に埋もれて表情は見えない。
見えるのは焦げ茶色い髪と晒された頭皮と赤くなった耳だけ。

それは、反則だろ。






「ふわっ!?やぁ、やめ」

「…お前が悪い」

「ふ……っ、やぁ、あ」






腰を撫で回しながら、耳に舌を這わせる。
くすぐったいのかそれとも感じているのか、甘ったるい声を上げて不動は身を捩った。
あまり強い抵抗はしてこなかった。






「ば、ばか、やめろぉ……」

「やめてほしいのか?」






そう言ったら不動の肩がぴくり、と震えた。
そしてさっきの声より一層小さな声で紡がれた言葉に、ぐらりとした。






「くち、にキスして」

「………っ!」






まんまと当てられた俺は衝動的に目の前の身体を抱き締めた。
細くて軽くて、乱暴にしたら壊れてしまうんじゃないかと思うぐらいの、身体。
仄かにあたたかいそれがたまらなく愛おしいと感じた。















まさかの飛不
お兄ちゃんと弟っていうか私の中では百合なんですか二人ともかわいいよね