novel | ナノ

十年後設定鬼不甘






俺は最近、忙しい。

大学を卒業してから、俺は父の跡を継ぐために、父の補佐として働いている。
例年なら忙しくないはずのこの時期に、俺はなぜか忙しい。
仕事は終わらせても終わらせても減ってゆく気配がない。
だから、帰りが遅くなるのは仕方がない、仕方がないのだが。





真っ暗な家。帰ってくるときには不動はもう寝ている時間だ。
一人玄関に入り、ただいまという声が虚しく響いた。
最近本当に朝か寝るときぐらいしか不動の顔を見ていない。
まともな会話なんてする暇もない。
不動が恋しい。顔を見たいし、話したいし、二人でのんびりしたい、触れたい。
そんな衝動に駆られ、鬼道はスーツのまま、真っ先に寝室へ向かった。






大人二人が寝てもゆとりのある、キングサイズのベッド。
こちらに背を向けて、不動は寝ていた。
毛布からフワフワの髪がちょこんとはみ出している。
俺がベッドに腰掛けるとギシリと音がした。
そのとき、毛布がぴくりと動いた気がした。
鬼道はちょっと期待して、不動に声を掛ける。







「不動、起きてるのか?」

「……………」

「………寝てるか」







不動の髪の毛を梳く。
不動はうううと唸って、止めろとでも言うように身を捩った。







「不動」

「………………」

「ふーどーうー」








覆いかぶさって抱きしめると、その身体はすっぽりと腕の中に収まった。

ふっ、と短い溜め息が聞こえた。






「なに拗ねてるんだ」

「別に、拗ねてねーしっ」






不動はぐいぐいと胸板を押して抵抗してくるが、離さない。
あまりにも可愛らしくてつい頬が緩んでしまった。
あまりにも久しぶりにじゃれあっている。たまらなくいとしい。








「おい、笑ってんなよ」

「笑ってない」

「じゃあさっさとメシ食ってこいよ」

「それではお前が寝てしまうだろう」






やっと不動が顔を見せてくれた、
と思ったら呆れ顔。
というか参ったなあとでも言いたげな苦笑い。






「待っててやるから。ほら、行け」

「…分かった」







そう言って不動は鬼道の手を握った。
何だかたまらなくしあわせな気分になってしまって
鬼道はその綺麗に弧を描いた唇に自分のそれで触れた。






「おいノロノロしてるのマジで寝るぞ」







とことん色気の無い言葉につい笑い声を上げてしまった。
不動の膝で軽く小突かれる。
行ってくる、と言って立ち上がって歩くと後ろからペタペタと、素足で歩く音。
振り返ると後ろに不動が居て、驚いた。






「……なんだよ」

「いや、なんでも、ない」








顔を真っ赤にして目を逸らす不動。
もしかしたら、不動もちょっとでも長く傍に居たいと思ってくれているのだろうかと、それだけでなんだか、幸せだ。







「明王」

「な、に」

「結婚とは幸せなものだな」

「…ふん」







不動がするりと鬼道の手を握った。
鬼道は、それを優しく握り返した。
仕事が一段落したら、不動と何処か、すこし遠いところにでも出掛けようか、とこっそり考えた。









「風呂は一緒に入ってくれないのか」

「っ!馬鹿っ!!」




















ハジメ様に捧げますグダグタですいません…!!!
ほんとーに色々とお話できて嬉しいです!
これからもよろしくお願いします(^O^)