novel | ナノ






鬼豪というか豪鬼というか豪+鬼というか












静かな時間が流れる。

鬼道にはこの沈黙が心地よく感じられた。

隣にいる豪炎寺は黙々と本を読む。

鬼道がノートにシャープペンシルを走らせる音と、時々豪炎寺がページを捲る音が聞こえるだけだ。






豪炎寺と鬼道は、ほんとうにつきあっているのか、と何度も聞かれる。

お互いに淡白で、ベタベタしない。

恋人らしいことだってひとつもしない。

むしろ他の奴らに対して接するよりも素っ気ない感じだ。







「鬼道、」


「ん?」








珍しく豪炎寺が声を発した。

鬼道が顔を上げたら視線がかち合って驚いた。

豪炎寺の目は鋭くて真っ直ぐで、そのくせ何を考えているかよくわからない。








「やっぱり、変か、おれたち」


「……さあ?どうだろうな」








同じことを考えていたようだ。なんだか笑える。

豪炎寺は微笑を溢した鬼道をきょとんとした表情で見つめた。

だが、あんまり気にしていないふうに言葉を続ける。








「おれは、恋人"らしい"というのがよく分からない」


「ああ、俺もだ」


「やっぱり何かしないのは変、かな」


「ん、よくわからない、が、このままがいいな、俺は」









そう鬼道が答えると、豪炎寺は頷いて、

ちょっとだけ笑った。






無理に頑張ろうとしなくたっていいのだ。


俺たちは、これがしあわせなんだから。








(このほろ苦さが丁度いいんだ)















ビターコンビネーション
title by 空想アリア