novel | ナノ






※ほんとうにほんとうにちょっとだけ裏









もう頭が沸騰していつか爆発するんじゃないのか。

目の前にこんなに愛らしい不動がいるのに耐えられる、わけがない。

不動の胸元に、汗がすうっと流れていった。

それを今すぐ舐めとってしまいたい。

不動を引き寄せて顔を近付ける。
もう少しで唇が、




鬼道がキスをしたのは不動の白い手のひらだった。










「なにしてんだよ、鬼道くん」


「な、何って……」


「終わるまで、ダメ」




今日3回目の撃沈に鬼道はがくりと肩を落とした。











きっと暑いのが悪い。いや、絶対悪い。

だからこんな厭らしいことを考えてしまうんだ。

夏休みの宿題を一緒にやるというのを口実に、鬼道は不動を家に誘った。

ちゃんとした用事がないと不動はなかなか会ってくれない。

外からはいかにも暑苦しい、蝉の声。

目の前には魅力的な姿でこっちを煽ってくる、つれない恋人。

まさに拷問だ。
駄目だ、やっぱり耐えられない。









「ふど―――――」



「はぁーあ、疲れた!休憩しようぜ鬼道くん」










脱力。不動はどこまでも気まぐれだ。

恨めしそうに不動を伺い見れば、不動は声を殺してクスクスと笑っていた。










「おっ、お前な……!」


「アハハッ、鬼道くんかわい、腹いてぇ」










今度は腹を抱えて大笑い。

鬼道は不満げに眉を顰めた。

ひとしきり笑ったあと、不動は目を細めて鬼道をじっと見つめた。









「な、何だ…?」


「ちゃんと我慢できたイイコの鬼道くんにご褒美あげよーかなって」










ほら、と不動は手を伸ばした。

鬼道はそれに、躊躇わず勢いよく抱きついて床に押し倒した。

まさかこうなるとは思っていなかったのか、不動は軽い抵抗をしてきた。

それを無視して唇を重ねる。

不動の舌を追いかけて吸い上げるとびくりと反応を返してきた。

夢中になって続けていたら、ドンッと胸を叩かれてしまった。










「っは……しつけーよ、バカ!」

「感じてたくせに」


「…ばぁーか」










赤い顔で不動は笑った。

濡れた唇をぺろりと舐めて鬼道を煽る。










「ずーっと俺のこと見てただろ。そんなにヤりたかったの?」


「な…んでそうなる……」


「あんなにやらしい目で見られたら、なあ」










にやにやと嫌な笑みを浮かべながら、白い指で鬼道の顔をなぞった。

鬼道はその指を掴んで口に含んだ。

指先から、指の間まで丁寧に舐める。










「やめろって、あつい」


「今更だな」












(自制心なんて役に立つわけない)
(だってこんなに熱いんだもの、しょうがない)















我慢しろなんて人が悪い
title by 確かに恋だった