novel | ナノ












南雲と涼野は暑さに負けてぐったりと畳の部屋に横たわっていた。
しかし涼野の表情は至って涼しげだ。

それがなぜだか南雲をイライラさせてしかたない。

この暑いのに、だ。

南雲は暑さは別段苦手というわけではないが、今日の気候は尋常ではない。











「あ、お前、それ」


「ん?」











どこから取り出したのか、涼野はアイスを咥えていた。

彼の好きな青色の、ソーダ味と思われるアイス。











「ひとくち寄越せ」


「嫌だ」


「ふざけんな」


「それが人にものを頼む態度か」










涼野はごろんと体を反転させて南雲に背中を向けた。

そこで南雲はああそっか、と思い付く。

ごろごろと畳を転がって、涼野の背中にピタリとくっついた。











「やめろあつい」


「ふーすけぇー、ひとくちー」


「鬱陶しい」


「チッ、もーいい」











そう言い放って南雲はまたごろごろ転がってもと居た場所らへんに戻った。


それから少し間が開いて、とすとすと畳を歩く音がきこえた。

なんだと思い南雲が振り返ろうと、










「わっ!?何しやがる!」


「……アイス、いらないのか」











南雲に馬乗りになって涼野は言う。


ああそれか、なんかまた気に障って殴りあいの喧嘩になるかと思った。











「くれよぉー」


「いいよ、あげる」











あげると言ってから残りのわずかばかりのアイスを口に含んだ涼野に対して、文句を言い掛けた南雲の口は、涼野のそれで塞がれた。










「んんん!?」


「ふ…」











冷たいアイスが口の入ってくる。

自分はアイスのせいでひんやりとして、涼野の舌はよけいにあつい気がした。

この丸いのは、ラムネか。











「っは……なにしやがる」


「アイス、食べたいって言ってたから」












悪戯が成功してよっぽど嬉しかったのか、涼野はニヤリと笑った。
その手はゆっくりと南雲の唇をなぞる。











「ばか、お前のくち、あつい」


「晴矢もあつかったよ」











もう一度重ねたらちょっとだけ涼野の口のほうが若干冷たい気がした。


ああ、熱い熱い。























このあと治さんに見つかっておさーむ様がぴゃああああってなるといいな←



屈折アイアンスター
title by 空想アリア