novel | ナノ










おれ、円堂くんが好きだよ。

そう言ってあの日のヒロトは綺麗に笑った。

円堂は、なぜかヒロトが闇に溶けていってしまいそうで

どうしようもない不安に駆られてヒロトを引き寄せ抱きしめた。



細くって、ちょっと冷えて、まっしろなからだ。

ちょっと離しただけで消えてなくなってしまいそうで


やっぱりこわかった。














「どうしたの、円堂くん」


「ヒロトが、どっか行きそうで、」


「変なの、俺はどこにも行かないよ」
















円堂くんがここにいるから、俺はどこにも行きたくないなあ。

そう言ってヒロトはまた笑う。

いつもの星空がなんだかやけに素敵に見えた気が、した。

























もしかしたらおれたちは、ずっと夢を見ていたのかもしれないね。

そう言ってヒロトはあのときみたいに笑うのに


心臓がぎゅうと痛んで、いやだ、と円堂は思った。


そんな顔しないで。


やっと、ちゃんと笑えるようになったのに。











「ヒロト」


「ごめん、ごめんね円堂くん」


「どうして謝るんだよ」











うつむいているヒロトの表情はよく見えない。

でも、どんな顔をしているのかはなんとなく分かった。

そうすると円堂の胸はまた軋んだ。










「痛いね、円堂くん」


「うん」


「ごめんね」


「謝るなって」


「うん、でもごめん」












ヒロトはさいごまで、俺のほうを見なかった。


あれは、どっちの夢だったのかは誰も知らないんだろう。














(さようなら、どうかしあわせに)










ばいばい、夢からはもう醒めよう
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